愛とユーモアとセンスがちりばめられた作品
サブリナの変貌が粋を飲む
大富豪のララビー家の次男坊に恋する運転手の娘・サブリナ。実らぬ恋とあきらめつつパリへ料理学校に入るため2年行きます。そんな料理学校の生徒の男爵から「今は月にロケットを飛ばす時代だ。手が届かないなんてことありえない」という粋なセリフで励まされ、自分を磨くサブリナ。帰国後、ララビー家の次男は見違えるほど変わったサブリナを見て人目で恋に落ちます。
このサブリナ(ヘップバーン)の変貌・美しさは観衆の心を完全につかみます。つまりは、観衆がララビー家の長男、次男の気持ちと同化します。ヘップバーンの持つ魅力を最大限に使った、物語の最初のアクセントです。
三角関係だが、仲のいい兄弟はお互い譲り合う
ララビー家は目下、仕事の取引拡大のため、次男坊と取引先の娘との政略結婚をさせようとしていて、これに加え、次男がシャンペングラスの上に座ってしまうというドジをやって、当分サブリナの相手ができなくなるというのが、物語の次のポイントです。
ここで、長男役のハンフリー・ボガードが次男に代わり、サブリナの相手をするようになる。ということで、ここからが、おなじみの三角関係が始まっていくわけですが、この長男が非常に弟想いでサブリナを弟に譲ろうと思っているため、醜い三角関係になるわけではありません。
そしてその弟想いの兄の気持ちに気づいて、弟が兄の背中を押してサブリナのもとへ行かせるというハッピーエンドで終わります。
アイディア満載でスピーディーな展開
すべてのセリフ、シーンが、次のシーン、後のシーンの伏線となり、見る者をウキウキとした気分にさせます。弟のお尻をケガさせるという着想、その弟のために穴あきのハンモックを作るという発想、氷を置いた扇風機でお尻を冷やす笑い、料理学校での笑い「手首がこつ」という卵割りのシーンなど、笑いのアイディア満載でした。
男爵のセリフ、弟思いの兄の心情、娘思いの父の心情など心温まる心理描写や、サブリナの衣装、運転手や執事仲間の生活風景なども見事。自分の心情をフランス語では何というかという問いに忍び込ませるセリフ「弟と代わりたい」。弟の無邪気な兄思いぶり。最後の会議で着付け薬のタイミングを計る秘書と兄のシーン。
愛とユーモアとセンスが全編にちりばめられ、展開もスピーディー。なぜ、サブリナは豪華な服がいっぱい帰るほどのお金を手にしたのかがよくわからない部分もありますが、取るに足りません。
この作品は特に同業者にもおそらくいろんなインスピレーションを起こしてくれる作品だと思います。見ている最中も、そして見た後もとても気分がいいです。ボギーもより落ち着いてやさしさが前面に出ていて格好良かったです。
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