「黙っていてもくる明日なんて,オレはいらない」
通称が『鬱アニメ』って…ひどい!
バイファムから15年。また子供達だけで宇宙をさすらうアニメが出てきました。すでにアニメ雑誌から遠くなっていた私に,友人が教えてくれて,ビデオテープも買いだめして放送開始を待っていました。サンライズのこの手の話にはずれはないからです。太陽フレアの「ゲトルト・ファノメーン」により,南半球で17億人の被害を出した地球。アイバコウジは普通の16歳。母子家庭で育ち,宇宙で仕事をする為に第2操船科の資格を取り職業訓練学校リーベデルタにやってきます。幼なじみのホウセンアオイはCA科に,仲の悪い年子の弟ユウキは同じ資格を取りにやってきます。コウジは成績も中くらいならルックスも中くらい。特技と言えば仲間はずれにならないように,自ら仲裁役を買って出てその仲間の色にも染まることくらい。対するユウキは成績優秀・容姿端麗。喧嘩も強く,コウジに一生消えない怪我を負わした過去があり「腐った兄貴」と見下しています。おまけに一匹狼。そんな二人の仲を取り持つのが,幼なじみのアオイ。事件はリーベデルタがダイブする前に長期の休暇を取る時に起こりました。何者かが操舵室に潜入し,特別学生・通称ツヴァイを人質に立てこもったのです。職員のあらかたが地球に戻り,数人の教師と,理由がある者か降りるのがめんどくさい者のみ残っていました。リーベデルタから子供達を逃がすべく,教師達はリーベデルタの下にあった外洋型航宙鑑に避難させ,パージを敢行。全員が殉職します。パットという,たまたま遊びに来ていた幼い子供を残して。
最初は操船科のツヴァイが指揮を執っていた
とまどう生徒達を導いたのは,ツヴァイのユイリィでした。彼女は親が無く,奨学金で首位を採っていただけに,有名人でした。それぞれ数名のパーティを組ませ,共同生活をしながら自分の担当の仕事をして助けを待とうとしたのです。コウジの親友イクミ,イクミの彼女コズエ、ニックとアキヒロのコンビとレイコがチームになりました。そこに謎の敵の攻撃を受け,ユウキ達がプログラムする人型ロボットヴァイタル・ガーターとツヴァイは応戦。たまたまそこにいたコウジとファイナという美少女もツヴァイと共に操舵します。やがて生徒達の不満はたまり,不良グループ・ブルーチームが操舵室を占拠。ツヴァイは彼らの命令のまま操舵することになります。コウジは人当たりの良さからパイプ役を仰せつかり,これがユウキの「あの日和見主義兄貴が」と怒りに火を注ぐ結果となります。待てど暮らせど助けは来ない。生徒達はだらけ、仕事が滞った故に食糧難になり配給制となります。ツヴァイのリーダーだったルクスンは操舵室を追われて,誰も面倒を見なかったパットを発見。パットと共に雑用係で食料を得ます。生徒達は暴力的になり,元々イクミのポイントで楽な生活をしていたコズエは不良グループに拉致され,暴力を受けます。このあたりが大人と子供の漂流の違いですね。素直か,本能に任せるかが。
正論と暴力と
イクミはこの事件が許せず,コズエを連れてチームを離れて士官部屋に移ります。そして,バイタル・ガーターを奪い,「もう荒そうな!傷つけるな!」とブルー・チームを追い出して介護隊を編成。暴力を徹底排除していきます。暴力によって。あの優しく陽気なイクミの変貌に,呆然としました。彼女を暴行した相手すべてを伸したばかりか,暴力を嫌っていたイクミが暴力によってリヴァイアスを制圧するなんて。ヘイガーによって生徒達はAからEまでランクづけられて,住むところも隔離されます。イクミのやり方がおかしいと訴えにEランク部屋から出てきたコウジは,ブルーが持っていたニードルガンでイクミに撃たれ,生死をさまよいます。目の前で兄が撃たれる様を見たユウキは動揺し,操縦もままならない状態になります。やがてAランクの生徒は他の生徒を見捨てて リフト艦で脱出していきました。取り残された生徒は団結し,リヴァイアスをゲトルトの海から引き上げようとします。そんな中で,コウジはアオイの手を借りて命がけでリフト艦に飛び,イクミを説得します。そこにルクスンとユイリィが駆け込んできて「救助が来たのよっ」と叫びます。イクミは木星にいた頃,実の姉と禁断の中になり,姉は強制的に嫁がされますが自殺してしまったという過去の持ち主でした。だからコズエが暴力を受けた時に姉の面影と重なって,暴力に走ってしまったのです。1年後。地球政府からコウジとユウキに「もう一度リヴァイアスに乗って欲しい。あの船は,人間と唯一リンクした貴重な船です。人類の未来がかかっているのです」ここで初めてコウジは拳をふるいました。「あんたらはオレ達を見捨てたばかりか,未来までっ!」
本当の強さとは?
コウジは再びリヴァイアスに乗ります。間違ったところに戻って,今度こそやり直す為に。アオイもユウキもユイリィもルクスンも再乗艦しました。子供達の顔は,未来に向かって輝いていました。迷いはありません。雑用係をしていたルクスンは,リヴァイアスに乗り込んできた敵に向かっていった勇気を評されて,再び艦長の座に着きます。行く先は,コウジに決めて欲しいと,ルクスンもユイリィも端末で語りかけてきました。コウジは一時的に恋人で,すれ違ってしまったファイナに会いに天王星を選びました。黒のリヴァイアスは子供達を乗せて宇宙へと旅立っていきました。間違ったところに戻るには,とてつもない勇気が必要です。若い彼らはもう一度自分をやり直す為に旅立っていきました。本当の強さとは,武器に頼らず己の心で戦うことだと思いました。死にかけたリヴァイアスなど、コウジは怖いかもしれません。でも,それすら自分の過ちと認め,戻っていきました。ラップの音楽が,こんなに子供達の未来を祝福しているように感じたのは,最終回だけです。子供達が明日をつかみ取ることを,祈っています。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)