リアルアニメの一つの頂点!よくぞここまで書ききった! - 無限のリヴァイアスの感想

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無限のリヴァイアス

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映像
4.13
ストーリー
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キャラクター
4.00
声優
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音楽
3.75
感想数
4
観た人
9

リアルアニメの一つの頂点!よくぞここまで書ききった!

4.54.5
映像
4.0
ストーリー
4.5
キャラクター
4.0
声優
3.5
音楽
4.0

目次

リアルアニメの一つの頂点

本作は鬱アニメなどと言われ低く見られている部分もあるようだが、私は高く評価している。本作より5年前に放送された「新世紀エヴァンゲリオン」以来、ヒーロー性が薄い活劇アニメは明らかに幅を広げた。その中でもこの「無限のリヴァイアス」は特筆すべきだろう。

立場が弱く特別な能力もない主人公・相葉昂治が、状況に翻弄されつつも、「自己の意見を持ち続ける点でのみ」主人公であり続けた点が素晴らしい。

彼はかっこよく戦う、全体をまとめ指揮する、などのこれまで主人公が担ってきた部分をほとんど担当せず、とはいえダメキャラとかクズキャラでもなく、本当にごく普通であり続ける。唯一主張するのはもっと良い方法が無いかとみんなで考えよう、という点だ。

「エヴァ」の碇シンジも自己主張が下手で些細なことでも気にする内向的な少年ではあったが、彼には特異性があった。彼自身にとっては重荷だっただろうが、「エヴァ」の話は出生の時点から彼でなければ成り立たない、ある意味シンジのための話だ。

しかし「リヴァイアス」は主要キャラの誰をメインに置いても話は成り立つ。

役割はそれぞれ違うが、祐希、あおい、イクミ、ユイリィあたりなら十分主人公足りえたはずだ。誰をメインにするかで話のニュアンスは変わってくるとは思うが、ストーリーの核を変えずに誰もが主人公足りえるという点で本作は抜きんでている。

現実社会は一人のヒーローが何かを成し遂げ、周囲に与え続けるなどという構図はない。少しずついろんな人がいろんな責任を担っているのが普通だ。

各自の行動が、自分自身や近しいものに影響を与えるのは当たり前だが、数百人の集団の中ではかき消されることが多いだろう。

本作はそのようなリアルさがひしひしと描かれている。

自己の感情や感性で事態を大きく動かす人間はごく限られており、時に発現する個人の大きな動きも、すぐさま集団に飲み込まれていく。大多数の人間は「自然とおこる集団の流れ」に翻弄されるのみなのだ。

つまり本作が「リアル」であり続けた要因は抜きんでた能力者を置かなかった、という一点に尽きる。 

辛いシーンで視聴者が離れる覚悟

痛快なシーンが少なく、ひたすら辛く暗いシーンが続く展開を書ききった本作に対して私はスタッフたちに称賛を送りたい。

いかに自由度が上がったとはいえ、少年少女が見る前提のアニメ作品にもかかわらず、厳しいシーンを半年にわたって書き続ける勇気は想像を絶するだろう。

おそらく途中で見るのをやめた視聴者も多かっただろう。それでもなお妥協することなく辛いシーンを書き続けた。

番組スポンサーもよくこの展開を許したものだと思う。

不必要な萌えやエロで人気取りに走る作品が多い中で、本作はそのような商業主義に走っていない。スタッフ、スポンサーともにあっぱれである。 

良作だが、どうかと思うところもある。1・ファイナの扱いどうよ?

後半で殺人者だった、とわかる描写があり、状況に流されて悪に染まるとか、ストレスのはけ口として人に当たるなどのレベルではない、他者とは一線を画す存在になってしまったファイナ。

他のキャラも抱えている問題を解決できたわけではないが、最終話で再度リヴァイアスに乗船した人間は「まあいいや」と保留することを憶えた、あるいは問題と共存していくなどの選択をした、などの成長を遂げたと思われる。いわゆる大人になった、というべきか。

しかし最終話には出てこない彼女はどうか。

彼女の決着についてはこの作品で数少ない明確な問題がある。他のキャラはどの人間にも闇の部分がある、という描かれ方をしているのに対して、ファイナ=悪という図式で描かれており、そこに宗教も含まれてしまう恐れがある、という点だ。

ここで放送当時を振り返る必要がある。

本作放送は1999年、この頃の日本で「宗教」という言葉は「オウム真理教」を連想させるものだったのだ。

本作と直接は関係ないので簡単な説明にとどめるが、「オウム真理教」は1995年に東京都内の地下鉄車輛内で猛毒であるサリンを使ってテロ行為を行った。これにより多数の死傷者が出たこともあり、教団は解体され事件を主導したと思われるものは逮捕されていく。

それ以前にも日本では「宗教」という言葉は「怪しいもの」というニュアンスを含んで使われることが多かったが、この事件以来「怪しい」というあいまいな表現より「危険」という意味合いを強めてしまう。

その意味でリヴァイアス乗船時点から「悪」に手を染めていたファイナが、怪しい「宗教」を「信仰」している、という図式がステレオタイプすぎる、と私は思う。

他のキャラがすさんでいく中で小悪に身を染めるのに対して、ファイナの悪は登場時から仕込まれている。リーベ・デルタ時代に既に二人の知人を殺している、という設定になっているようで、ほかのキャラがリヴァイアスのスフィクスの影響を受けて精神を病んでいくのとは全く別のものとして描かれている。

本作では個々の罪もその後の生き方で許される、または許し合えるという気配が漂っているがファイナはもとより、ファイナーズにいた人々も再乗船していないところを見ると宗教に走ったものはもう戻れない、という極端な解釈も可能である。

これこそが本作の一番の欠点だと私は思う。例えば「オウム真理教」のように組織的に犯罪を犯してしまった教団でも、個々の信者達は、自分または誰かを救うために信仰を求めただけなのだ。それを理解せず宗教=悪とくくるのは完全なヘイト思想であろう。 

良作だが、どうかと思うところもある。2・再乗船者多すぎない?

最終話でリヴァイアスに再乗船する人々が描かれるが、正直ちょっと多すぎると思う。主人公に近しい人々は当然再会して話すシーンを入れたいのはわかる。

祐希、あおい、イクミ、ユイリィは話の流れ上当然再乗船するだろう。

しかし何人かは港で見送る際に言葉を交わす、程度でも良かったのではないだろうか?

特にそう思うのはヘイガーだ。スフィクスの影響かもしれないが彼は明らかに複数の人を「救助しない」ではなく「殺そうとした」。

狂信的雰囲気を漂わせるファイナが際立って悪っぽいが、未遂に終わったとはいえ殺そうとした人数ではヘイガーの方が圧倒的に多い。

それを踏まえて、やはり皆とは顔を合わせにくい。自分は地球でもっと人間として成長したい。旅の安全を心から祈る、などのメッセージを伝えるのみ、という方が彼らしくもある気がする。

ブルーもそうだ。

基本的にリヴァイアス乗船以前からアウトローだった彼が再度乗っているというのはどうも想像しにくい。乗船前にユウキが彼のアパートに殴り込みをかけ、勝てはしなかったがバンダナを奪い取るという快挙を上げ、その勢いで乗り込んできた。でもいいように思う。

ユイリイがいることを予想して再乗船した、という可能性は高いが、スタッフとしても彼がいる風景を書けなかったからこそのバンダナだけの登場なのではないかと思う。 

再出発後の最初の目的地が乗員の成長を示す

行き先を昂治に決めさせる、という最後の演出が良い味を出している。

「代案が無いのに一般論だけで反対するな」という趣旨の言葉がしばしば使われる本作。

窮地に立って一刻を争う時、案もないのに発言するな、というのはよくわかる。しかし「答えは無くてもまずみんなの気持ちを汲む」「少数のための最善策より多数のための次善策」それを艦の方針にしようという姿勢の表れだろう。

この選択によってみんなが成長していることがわかる。

そして昂治は、その投げかけに対してファイナがいる天王星をあげる。

前述したように悪の権化として描かれたファイナ、そこに行こうというのは昂治としては「成長」というより「以前からのスタイルを貫いている」のだろう。

ペアを組んでいたイクミに撃たれたあとでも、意識を取り戻した直後に会って話したい、と思い行動する。

「こうしたらすべてが解決する」という提案があるわけではないけど、「こういう考えの方がいいんじゃないか?」それを伝えることこそが大事なのだ。

例えば「世界から戦争を無くしたい」と主張する人に、世の中は「それは難しいよ。そんな方法は無いよ」と言うだろう。

しかし、「方法はわからないけどみんなで考えよう」という人がいなければ何も始まらないのだ。

わざわざ天王星まで行ってもファイナは会ってくれないかもしれない。会ったとしても話を聞き入れてはくれないかもしれない。それでも自分たちの想いを伝えに行こう、それこそが分かり合うための第一歩なのだ。

この最後の数分で「リヴァイアス」はそれを見事に書ききった。

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