ホラー映画以上の恐怖!! - 天使のたまごの感想

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天使のたまご

3.403.40
映像
4.00
ストーリー
3.00
キャラクター
3.00
声優
3.00
音楽
4.00
感想数
1
観た人
1

ホラー映画以上の恐怖!!

3.43.4
映像
4.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.0
声優
3.0
音楽
4.0

目次

黒くて暗い

映像そのものに、黒が多いことが特徴的な作品だと思います。また70分程のアニメ作品で、主要な登場人物が2名と少なく、名前も設定されていません。また、明確なストーリー性がなく、謎が謎を呼ぶアニメ作品で、多くの部分が観ている側に委ねられているように感じます。

何も明確に打ち出されているものがなく、ただ漠然と恐怖という感情に襲われました。

観た後に正直に思った感想は、70分という時間をかけて出題された1問の「なぞなぞ」のように思いました。それぞれ映像の中から、要素や項目を抽出して、どのように解釈して、どのようなメッセージ性を見出していくのか、ということなのではないでしょうか。

ただ、作品全体が暗く、黒く、シュールな感じが漂っており、原作者には意図するものがあるのだろう、と感じます。そうでなくては、作品そのものの存在意義を見出せません。

ただ、直感的に思ったのが、人間の心の奥底に存在する黒い部分を抽象的に映像化したアニメ作品であるように感じます。そして、それが恐怖という感情になっているように思います。

本当に、ホラー映画以上の恐怖を体感させられました。

 

感情のない世界

恐怖を感じる二つ目の要素として、二人の登場人物の表情が挙げられるのではないでしょうか。名前がない少女と青年の二名が登場人物ですが、感情が感じられません。また、目は死んでいるように暗いのが恐ろしい部分です。

喜怒哀楽の「喜」「楽」というプラスの感情は皆無、「怒」「哀」という部分も僅かに感じられる程度です。ただ目が死んでいるという様子と、黒くて暗い映像の全体から、「哀」を表現しているのかもしれません。

また、兵隊なのか幽霊・亡霊なのか分からない存在が登場しますが、それらの意味することもよく分かりません。顔も描かれておらず、影みたいな描かれ方をしているので、幽霊や亡霊みたいなものを想像します。彼らにも顔が描かれてないことで、表情もなく、当然のことながら、全く感情は感じられません。

シルエットで兵隊を想像させるのですが、彼らが持っているのは銃ではなく、釣竿のようです。そして、いくつもの兵隊らしき影が大きな魚の影を吊り上げようとしています。そこに意図するものが全く分からないことで、自分自身の中で、恐怖という感情が増してくるように感じました。

 

誰もいない街

少女と青年しかいない街という不自然な状況、そこに孤独という恐怖が足されます。映像は、遺跡のような場所、森の中、そして誰もいない街という3つの場所を映しています。そして、その3つの場所を転々と移動しながら、少女の行動は、水を飲むこと、食べ物を調達すること、睡眠をとることの3つに分類できます。

しかし、青年の行動は、少女と共に行動しているようですが、水を飲む、食事する、睡眠するという場面は皆無です。その部分に、青年の行動の意図することが分からないです。ただ、少女と共に居ながら、同じ行動を一切しないことが、最後に「たまご」を割ることを示唆する布石になっているように思います。

 

作品タイトルについて

映像ばかりに着眼点を置いてしまうと、謎が謎を呼び、分からないまま終わってしまいます。ここで、作品タイトルについて考えていきます。「天使のたまご」というアニメ作品のタイトルですが、「天使」は誰を指すのか、「たまご」は何を指すのか、という部分に着目したいと思います。

映像の中に、分かりやすく「天使」というものは登場しません。しかし「たまご」は分かりやすい形で、描かれています。「たまご」を所有しているのは少女であることから、「天使」は少女であると考えるのが自然なのではないでしょうか。

このアニメ作品において、明るい要素というのが描かれていないのが特徴です。しかし、唯一といえるでしょうか、明るい材料として描かれているのが「たまご」の存在だと思うのです。

ただし、「たまご」自体が明るいのではなく、少女が「たまご」に向けている「期待」という感情が明るい要素なのだと思います。終盤の場面で、「たまご」が孵化することを期待する少女、そして、それを否定する青年の場面があります。その場面が「期待」を示唆する分かりやすいところのように感じました。

そして、黒い・暗い印象である当作品において、「たまご」は正反対の白色で、作品の中でも強調されている要素だと思うのです。また、感情がないように描かれていることで、少女の「たまご」に向けた気持ちは強調されているように感じます。そして、誰もいない街で、孤独が強調されていますが、「たまご」の中身に孤独から逃れる気持ちが表されているように思います。

 

見せかけの開放

きっと「たまご」に期待する少女と、「たまご」の中身が空であることを知っている青年という部分が、この作品の面白みのひとつになっていると思います。

青年が「たまご」を割ることを目的としていたなら、冒頭の場面で「たまご」を割るチャンスはありました。しかし、青年は少女に「たまご」を返していることを考えると、「たまご」を割ることが目的ではなかったことが伺えます。

それでは、青年の目的は何だったのか、と考えてみます。中身はなく孵化することがない「たまご」に期待している少女に、そのことを気付かせることが目的だったように思えます。青年は、少女が「たまご」を大切にしていることを知っていました。そして、少女が孵化することに期待していることを、行動を共にすることで知り、報われないことをしているように思ったのでしょう。そして、十字架のようなもので叩き割ったのではないでしょうか。

結果として、少女の「たまご」に向けた想い、そして青年に対しても裏切られることになります。しかし、川に落下したことで、水面下に映った少女は成長しているように受け取れます。それは少女の「たまご」に向かっていた一直線の気持ち・意識が解放されたことを示唆しているように思います。

 

ただ、それにより少女の置かれた環境が劇的に変わることは想像できません。孤独であることや、唯一の希望であった「たまご」を失ってしまった喪失感があるでしょう。

少女は目的や目標を失ってしまい、生きることそのものを否定するかもしれません。少女の気持ちは「たまご」から別のものにいくかもしれませんが、孤独感は満たされることはないでしょう。また、青年の存在は孤独感を埋めるものにならないように感じます。それは、永遠に満たされることのない地獄のようなものに感じられます。

ひょっとしたら、「たまご」に気持ちが向かっていた方が、少女にとっては幸せだったのかもしれません。それを示唆するように、最後は目線がどんどん高くなり、少女・青年たちが居た場所は「たまご」の中、という結末だったように感じます。

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