妻2度も”最期の別れ”を経験した旦那 - 秘密の感想

広末涼子と杉田平介の名演技が作り上げた作品。

当時大人気だった女優広末涼子はこの作品によって素晴らしい演技を見せたと私は感じました。とても難しい役でしたたが見事に演じていたと思います。広末涼子の体に母親の魂が入り込んでしまい、広末涼子は体はそのままで中身は、年を重ねた母親なのです。複雑で難しい役だったと思います。しかしそれを感じさせないくらいの力強さを見せてくれました。旅行中のバス事故により母親は亡くなったと思っていたら、魂だけは生きていました。しかも娘の体の中で生きていたです。それには驚きました。ということは、娘と母親のどちらが死んでしまったのだろうか。2人とも生きているということなのだろうか。それとも娘が生きているのでしょうか。母親が生きているのでしょうか。他人がみた場合は、娘のが生きていると思うでしょう。見ためが娘の姿だし、声も娘の声ですから、他人が見たら間違いなく娘が生きていると思うでしょう。しかし、旦那からしたらどうなのだろうか。見ためが娘だとしても、話し方や仕草などは自分の愛した女性です。話の、内容はきっとこの夫婦にしか分からない会話で懐かしい思い出話がつきません。2人からしたら外見は違っていても心の通った夫婦なのだとおもいました。2人で並んでベンチに座っている姿は、父と娘にしか見えないはずなのに何処か少し母に見えた私は不思議な気持ちになりました。演じていた広末涼子の演技力が高くなっていると確信しました。周囲にはこの不思議な出来事がバレないように必死に隠し続けるのですが、やはり隠すといってもかなり困難であると思います。最初は順調にいったとしても必ず2人には娘に対してやるせない気持ちが浮かんでくるでしょう。母親は、娘の体を借りて今を生きていると考えると娘に対して申し訳ないと思うと思います。もし自分だったら耐えらませんし、毎日どうやって過ごせば良いのか分からなくなってしまいます。娘の体で旦那と手を繋ぐことさえ申し訳ない気持ちになると思います。一体どうしたらこの夫婦は生きているこの時間を幸せなものにして共に過ごすことが出来るのだろうと思いました。形は変わってしまったけど、奇跡的に事故で助かった体です。難しい問題ですが、私は、その命を大事にして旦那と2人で過ごすと思います。周りには何も言わず何処かへ引っ越して2人だけの時間を大切に過ごします。娘もきっとそう願うような気がします。

2度も妻にお別れをした旦那の気持ちは考えられない程の悲しみでしょう。

次第に時間が経つにつれて娘の体に娘の魂が戻ってきますが、その代わり母親の魂は、少しづつ消えていくのです。1番切ない思いをしているのは、旦那かもしれません。外で旦那と手を繋ぎ肩を寄せ合いながらベンチに座り涙を流すシーンは、妻の魂が消えてしまうことをどのように受け入れればいいのかという旦那の切ない思いが伝わってきて涙が流れました。もう会うことは一生出来ないという妻の気持ちは、どんな思いだったでしょう。本当ならあの事故で亡くなっていたはずが、神様が少しだけ旦那にお別れを言う時間をくれたのだと思います。それを、妻は分かっているのです。旦那は妻が事故で助かったと思っていたのに、結局またお別れをしなければならないのですから、本当に旦那は辛かったと思います。一生のうちで2度も妻にお別れをしたということになるのです。悲しかっただろうなと思いました。娘の体から妻の魂が消えた時、娘の魂が戻ってきますが、それが唯一旦那の救いだっただろうと思います。妻は居なくなってしまいましたが、彼の元には娘が戻ってきたのです。切ない涙を浮かべた旦那の表情が忘れられないくらい頭に浮かんできます。

娘の中に、もう一度妻が現れてくれないかと願ってしまう父の辛い心情。

娘が戻ってきた時の旦那の表情は、涙で溢れていましたが、その涙は、娘が戻ってきて涙したのか、妻が完全にこの世から居なくなったということを実感して流した涙なのか、私にはどちらだと言いづらいです。旦那の気持ちはかなり複雑なものになっていたはずです。少しの時間で喜びと悲しみを次々と味わい、苦しみ、彼は立ち直れるのだろうかと思いました。

娘はその後結婚しますが、その時の父の表情を私は忘れられません。娘が結婚したという幸せな出来事ですが、彼にはまだ妻が忘れられないでいて自分たちの結婚した頃の思い出をきっと思い出していたように感じました。彼の遠くを見るような瞳が印象的でした。もういるはずのない妻の魂を娘の顔を見ながら、思い浮かべているのだろうと思います。少しでも良いから娘の中に妻の魂がまた戻ってきてくれと願っているようにも見えました。そんな彼の心情を理解することが出来ると、私は簡単に言葉にはしたくありません。だけど彼の悲しみがどれだけ深いものかは分かります。愛する人と2度も別れを経験するなんて普通はあり得ないことです。1度だけでも悲しみは大きいのに、2度も経験した彼の心情は強いと感じました。