思わず嫉妬したくなるほどの才能、だそうです。 - 人のセックスを笑うなの感想

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人のセックスを笑うな

4.174.17
文章力
4.00
ストーリー
4.17
キャラクター
4.17
設定
4.17
演出
4.17
感想数
3
読んだ人
5

思わず嫉妬したくなるほどの才能、だそうです。

4.04.0
文章力
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
4.0

目次

私にはわかりません。

思わず嫉妬したくなるほど、とはどの程度のものなのでしょうか?私なりの解釈としては、簡潔的で後を引かず、すらすらと物語が躓くことなく流れていく技法が羨むを通り越して嫉妬へと生まれ変わるほどの才能なのかな、と思いました。私なりに噛み砕いて噛み砕いて真意に近づこうと努力しました。しかし、私がハッと息をのむほど夢中になり、骨組みにしっかりと肉がついている作品だと唸るほどではなかったため、ここまでの解釈が限界でした。映画化もされましたし、松山ケンイチに永作博美さんはナイスキャスティングだと思いますが、限界でした。私にはヤングアダルトのような柔らかさを持ったこの作品に、読み応えは一切感じませんでした。きっと淡々と物語が進み、物語が動き出すのかな、と思った矢先に終わってしまって、期待が大きかった分味気なく感じたのだと思います。私の過度の期待がいけなかったせいで、私はこの作品を深く読むことを途中で放棄しました。申し訳ない限りです。なので、改めて読み直したいと思います。

短い文の集まり。

例えや表現がわかりやすく簡単で一文一文がとても短いです。見たものをそのままありのままに表現し、視覚的な文章だなあと思いました。その短文が付かず離れずの良い距離感を持って自立しているように思えます。太宰治も短い文章を好んでいた一人です。そう考えると、実力はすごいものなのだと納得します。印刷も工夫されたのか、行間が広いです。文字が窮屈に収まっているという印象は受けませんでした。そういう点からも、のびのびとした才能が顔を覗かせているとわかります。通勤時間にはもってこいの作品だと思いますが、タイトルが刺激的というか赤裸々なものなので、カバーはした方がいいでしょう。短いからこそストレートに情景が浮かびます。まどろっこしい簡単のような文章ではなく無機質的な印象を受ける文章ですが、これがまた読んでいて疲れません。あれやこれや取り込んで中性脂肪を蓄えるより健康的でスマートです。しかし、ただ痩せているだけでは美しさや印象はいい方へと転びません。短いけれど子供すぎない、飽きのこない構成になっているから短くても文学としての基準を満たしている、と思います。長い文章はきっと誰でも書けます。短い文章なら尚更。けれど、その中間の長さを不自然ではなく書くということは、ことさら難しいような気がします。

玉ねぎ

剥いても剥いても中身が見えず、結局残るものがなかったと落胆する。最初に読了した私はまさに玉ねぎに弄ばれて泣かされました。しかし、私は読んだ小説から必ず何かを得たいと思っています。それは例えばうまい言い回しですとか、哲学的な考えであったり様々です。私はメモを取りながら読むことが多いのですが、それは気に入った文章を忘れないために書き留めているからであり、また書くことで繰り返し読むたびにいい気持ちで読むことができるからです。お気に入りの箇所があればあるほど愛着がわきます。なので、この作品でもいい文章はないか探してみました。気に入った文章はやはり見当たりませんでしたが、油絵の先生とその生徒という立場からか、服装だったり自転車だったり、それらのものの色をきちんと表現している。気にならない程度にひっそりと自己主張をする登場人物たちのアイテムが人間よりも生き生きとして見え、目立たずに体をちぢこませているけれど、両手はしっかりピースをしているような気がします。その辺のしたたかさも嫉妬するほどの才能に含まれているのでしょうか、わかりませんが、気にせずに読めてしまうので気にも留めなかったのですが、背景に溶け込ませるのも違和感なく自己主張をさせるのも技術のうちなんだろうなと思いました。

官能的ではない、青春的。

いやらしさが全くないんです。描写は技術である程度モザイクをかけていますが、とても丁寧です。経験のある方は想像が容易でしょう。しかし、エロスが前面に迫ってくる気配が全くありません。それを狙ってお読みになっている方は肩を落とすでしょうが、しかし、この無邪気さはどこから感じさせるのか。わかりません。わかりませんが、短い文がどんどんと積み上がっていき、その背景があるからこそいやらしさではなく淡い恋の一部分を切り取ったような雰囲気を感じさせるのかなと思いました。これを狙っての文章構成であればあっぱれです。そこまで計算しつくされた作品なのであれば、これは思わず嫉妬してしまうほどの才能と評するのに納得がいきます。どうなんでしょう。意図的な物語の流れなのか、はたまた天然でやってのけてしまうのか。どちらにせよ、力量は計り知れません。またこの作品も一、二度読んだだけでは解釈しつくせないのでしょう。ここまで作者が引いた目線で独裁を放っていない作品は今まで読んだことはありません。誰しも作品に作者の個性が強く出ます。しかし、この作品では読者の想像力を存分に借りている。利用するという表現は語弊があると思いますが、まさに読者がいて初めて作品が完成するような、そんな気を起こさせる小説だと思いました。まだまだ読み込んで、私も思わず嫉妬してしまえるくらい理解したいなあと思いました。

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真剣な、遊びの酔いが醒めるまで

題名や珍しい著書名にどきりとして購入したのですが、中身はとてもポップな青春小説です。一生懸命な僕と、年上のユリとの恋模様。ゆるゆるとした空間と会話の中で、幼女と狡猾な大人の女性をいったりきたりするユリと、少年と老人をいったりきたりする、まっすぐで穏やかな主人公のやりとりが、『若者らしさ』そのものを表しています。激しそうで、激しくない。適当そうでまっすぐ真剣。激しさと、愛情と、その結末(果てと醒め)が分かっている『セックス』という一連の流れに添ったような、小説の流れの中で、まだその熱の中にいたいと感じる、主人公の若さと純粋さと真摯さに、いつかの自分を思い出しました。「遊び=真剣」と、とらなくなったのはいつからなのでしょう。こどもの頃は、本当に真剣に遊んだのに。日が暮れても、トイレに行きたくても、お腹がすいても、母親が心配で探しにきてくれるまで。私達は、かつて、遊びということばを適当に使って...この感想を読む

4.54.5
  • にゃん子にゃん子
  • 82view
  • 414文字

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