刹那的な恋
小池真理子さんの、いわゆる恋三部作のひとつです。主人公は3作品の中で一番若い、高校生。高校生特有の自我や嫉妬心、自己顕示欲がいやらしくない程度にでもリアルに描かれていると感じます。
この作品で一番印象的なのは、タイトルにもあるバロック喫茶無伴奏の描写です。主人公の響子と渉、祐之介とエマが出会うことになる重要な場所ですが、まるで自分も行ったことがあるかのように情景が目に浮かびます。2016年に映画化される際、作者の実写化にあたっての条件は無伴奏を忠実に再現することだったそうですが、理想通りに再現されていたように思います。
響子と渉が激しい恋に落ちる一方で、響子は受験や親との関係といった高校生が避けて通れない悩みにもぶつかります。渉の前では大人ぶった彼女が、高校生らしい子供らしさを見せる二面性がいじらしく写りました。そして渉との関係は思わぬ方向へ向かい悲しい結末を迎えるのですが、畳み掛けるこのラストは圧巻でした。渉のセリフが非常に淡々としているのが、哀しさを誘います。
映画化では、宣伝のときから物語の核心である渉は誰を愛しているのか?が明らかにされていましたが、個人的には大きなネタバレになってしまうようで何だかなぁと思ったりしました。物語の最初からゆっくり読み進め、4人の関係性を感じ取ってほしいです。- あなたも感想を書いてみませんか?
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