同じ病気の私からみた、”ツレがうつになりまして”の存在意味
うつ病がテーマの作品は見たくなかった私
現代病と聞いたことがある”うつ”という病気。何事にも、興味を示さなくなり、今まで楽しく思っていた事に対しても無感情になってしまう。涙が止まらなくなる、頭痛がする、吐き気がする。人混みの中にいられなくなる。意味もなく不安で仕方なくなる。体が重く思うように動けなくなる。布団にくるまり、暗い部屋にいると落ち着く。
これは全て私自身の経験から述べたものです。私も、ツレと同じ”うつ病”です。この作品のタイトルを見た時、最初は絶対に見たくないと思いました。何故か分からないけど、この病気の気持ちが映画で表現できるのかと、何だか悔しい気持ちになったからです。うつ病を映像化したことで何になるのか全く意味が分かりませんでした。誰かのためになるのか、うつ病を世間の人に知ってもらうためか。知ってもらったところで、うつ病は良くなる訳ではないし、この映画を見ただけで、そう簡単にうつ病を解釈しないでもらいたいと少し嫌な気持ちになっていました。映画のポスター写真を見る事でさえ私を嫌な気分にさせました。うつ病は、そう簡単な病気ではないと言いたかったのです。
自分をコントロール出来ない、罪悪感に潰されそうになる
”うつ病”は、心の病気と言われています。それは簡単にいえば、という意味だと思います。心の病気でも実際体にも異変がでます。それも理解してもらいたいです。ツレは、職場で上司に仕事をやめることを伝えてから、自宅で過ごします。布団に包まれてじっとしていたり、電車に乗るのも吐き気がしてしまいます。ツレは、心の他に体もいっぱいいっぱいになっていたのです。精神科で診てもらう前、イビキが酷かったり背中が痛かったりしましたが全てうつ病が原因でした。心の甘えだとか、弱い人間だとか言う人がいますが、それは間違っています。全く反対のことです。頑張り過ぎるから無理をして自分で自分をコントロール出来なくなってしまうのです。ツレ本人が1番分かっているでしょう。自分の不甲斐なさに。そして自分を責め続けるのです。悪いのはツレではないということ、しかし彼は自分が働くことも出来ない今の状態を申し訳なく感じて、さらに自分を追い詰めていきます。私がこの作品をみた理由は、この時のツレと同じように、自分を見失い、罪悪感だけが残り、漠然としている中で何となく見てみようかなという軽い気持ちからでした。実際見ていたら、涙が止まりませんでした。ツレの気持ちが手をとるように分かるので、自分を見ているようでした。彼のようにあそこまで几帳面ではありませんが、彼の行動の細かい部分がうつ病だという証でした。毎朝自分のお弁当を作ること、玄関を出る前にひと息つくところ、ゴミ捨て場でゴミをジッと見つめる場面は忘れられません。”ゴミの存在”を考えているツレの姿と表情はうつ状態を表しています。ゴミについて真剣な表情で考えている姿は何ともいえない気持ちになりました。精神科へ通い始めたツレは、ある男に話かけられます。その男もうつ病でしたが、ツレにアドバイスをい言いました。気分が良い状態がきてもずっと続くわけではない、薬はすぐには効かないなど教えられたツレは、ぽかんとした顔で聞いていました。これから起こる症状を予測するかのように、彼はツレに話しかけました。
存在の意味、存在の価値を考えだしたら危険の合図
ツレがある日”死にたい”と言い出します。毎朝作っていたお弁当が作れなくなります。あのシーンは、印象的で、お弁当が作れない、死にたい、この言葉のようにツレは少しずつ”うつ”の症状が悪化していきました。ツレが自殺未遂を起こしました。薬が効いてきてしばらく調子が良かったのにふと、不安になり、自分はここに居ていいのか分からなくなったというのです。働かず毎日家にいて、何もしない自分、布団に包まり毎日泣いていたツレは自分の存在価値が何なのか分からなくなってしまったのでしょう。私もツレのような気持ちになることがあります。彼は自殺未遂に終わりました、奥さんが助けてくれたからです。ツレはここにいていいんだよと夫婦で涙しているシーンは、うつ病の私からみたら、ツレ、良かったね、と心から思いました。ツレは奥さんに助けられながら、一緒にうつ病を克服するために、少しづつですが前に進みます。一歩進めたら喜びを感じ、また一歩先を目指します。うつ病とはそんな病気です。簡単に治らないし、完璧に以前のような生活に戻るのは不可能なのかもしれないと私は感じています。ツレが書いていた日記は彼の今生きている証なのでしょう。それを奥さんが読んだ時、複雑な気持ちになったでしょう。でも、これがツレの生きている証ですから、目を逸らさずに見守り続けて欲しいです。家族にうつ病の人がいる方へ、、、ゴミの気持ちを考えてしまうくらいの状態になり、自分の存在の意味を真剣に考えている姿を見たら、そっと手を繋いであげて下さい。ぎゅっと、手をとりここに居ていいんだと、大丈夫だよと伝えて下さい。
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