クローン開発に対する倫理観と問題点を問う映画 - ジュラシック・パークの感想

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クローン開発に対する倫理観と問題点を問う映画

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

生命の可能性に対する人間の認識不足

ジュラシック・パークの恐竜はクローンでできていて、卵から孵化するときはパークの創設者であるジョン・ハモンド氏を親であると認識させるために必ず立ち会うようにしていました。恐竜はすべてメスであり、卵を外で産むことはないように管理していました。ハモンド氏が本物の恐竜でパークを作ったのは、「まやかしではない本物をつくりたい」という思いからで、ほぼ道楽で作ったのではないかと思うほどです。未知数の生き物を扱っている割には職員の数は多くなく、施設を管理しているコンピュータエンジニアは1人しかいませんでした。彼はお金に困っていることもあり仕事量に比べて給料が少ないと訴えていました。

個体数の管理も完璧で、恐竜はすべて管理しているといっているハモンド氏に対し数学者のイアン・マルカム博士だけは異議を申し立てます。生命の繁殖しようとする力は未知数で、いくらメスだけで管理しているとはいっても繁殖する方法がなければ、独自の方法で繁殖できるよう進化するといっていました。実際パーク内に孵化した卵の殻が見つかっていて、人間の考えの浅はかさを感じさせる場面となっていました。イアン博士は、生命を人間が完璧に管理できると思うことこそ間違いであり、予測不可能なことがおこるという前提で物事を考えないと危険であると訴えています。実際システムエンジニアのデニス・ネドリーがお金のために恐竜の胚を盗み、フェンスの電圧を切ってしまい、恐竜がフェンスを破ってしまいます。イアン博士に言わせるとこれも「カオス理論」によるものとなるのでしょう。完全に支配できていると思っているからこそ、トラブルがおこっても対応ができずに、どんどん悪いほうへと事態が進んでしまうのでしょう。

現代のクローン技術

植物や動物でのクローン実験は進められています。現在確認されている哺乳類の成功例としてはネコ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ブタ、ラット、ラクダ、ヒツジ、マウス、ブタ、イヌ、オオカミがあります。そのほか絶滅危惧種を守ろうとガウルとピレネーアイベックスが作られましたが、両者とも誕生はしましたがすぐに死亡しているようです。絶滅した種族はなんらかの要因で絶滅しているため、それをクローンで誕生させたところでうまくいくかどうかわからないいうのは、クローンでつくった絶滅危惧種が、うまく成長しなかったことによるところからきているのかもしれません。

医療の現場では、臓器を複製し損なわれた臓器と入れ替えることができるよう、クローン臓器の研究が進められています。現時点で使用されているものは人工臓器が多く、心臓メーカーや人工関節などは実際使用されている人も少なくないでしょう。しかしあくまでも人工的なものであるため異物反応を起こすことも多く、自分の細胞を培養して臓器をつくることができれば、臓器移植による適応者を探す必要もなくなり、拒絶反応のない新品の臓器が得られると言われています。

自分の病気となった臓器を交換するために、自分のクローンを作って新しい臓器と交換するという映画もありました。お金や権力のある人間が隠れて自分のクローンをつくることは、止められないだろうといわれています。現時点ではクローン人間を開発すること自体違法とされていますが、お金を出せば協力する科学者がいれば止めることは難しいだろうということでしょう。

クローン技術に対する警鐘

クローンはDNAの複製から生まれます。しかし必ずしもDNAの提供元のコピーというわけではありません。ジュラシックパークの場合も取り出したDNAサンプルをもとに、いくつものクローン恐竜を作り出していますが、同じ種類の恐竜のDNAサンプルが何種類もあるわけではないにもかかわらず、役割分担をして狩りをする恐竜の場合リーダー格の恐竜がいたりします。クローンが単なる複製で、まったく同じものができるという考えからリーダータイプの恐竜のDNAでクローンを作ったとすれば、生まれたクローンは全部がリーダータイプになるといえるでしょう。

人間もそうですが、人格形成の際「先天的要因」と「後天的要因」とが影響します。「先天的要因」の場合はDNAに記憶されているデータによるものが影響しますが、「後天的要因」は生活環境によるものが大きく影響します。一番わかりやすいのが一卵性双生児で、DNAが同じことから天然クローンともいわれています。しかし、一卵性双生児が必ずしも同じ性格になるとは限りません。行動や考えがシンクロすることもあるようですが、だからといって二人で一人の人間ということにはなっていません。このように同じDNAから作られたクローンでも、別個体としての人格があるのです。生命を科学的に誕生させるためにはまだまだいろいろな問題があります。科学技術の発展を優先するあまりに、倫理的な問題を解決しないままにクローンの技術開発を進めることは危険ではないかと問題提起をしているようです。

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