無難な作品ではあるが、共感は得にくいか - マーサの幸せレシピの感想

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無難な作品ではあるが、共感は得にくいか

2.52.5
映像
2.5
脚本
2.5
キャスト
2.5
音楽
3.0
演出
3.0

目次

料理映画でもなければ、ホームドラマとしても半端か

『マーサの幸せレシピ』は2001年ドイツ制作の映画だ。のちに2007年にアメリカでもリメイク作品が作られている(こちらの題名は『幸せのレシピ』)。

ドイツ人は、一般的に日本人と気質が似ており、真面目で頑固な国民性だと言われている。主人公のマーサはまさに真面目な頑固な性格で、融通が利かない女性だ。それ故に、周囲と軋轢を生みやすい。そんなマーサが、交通事故で死んだ姉の娘・8歳のリナを引き取ることになる…というのが、『マーサの幸せレシピ』のストーリーになる。

リナも叔母のマーサと性格が似ており、頑固で融通が利かない。振る舞いも言動も表情も子供らしくなく、言うことを全く聞かず、笑顔の一つすらない。この「ヒロイン」の存在を見ていて、イラついてしまう人も多いかもしれない。

最終的にはマーサの元にリナが戻ってくるのだが、あれだけ突き放すようなことを言った叔母のもとに帰ってくる気持ちが理解できない。マーサもマーサで、あんなに可愛げのないリナを本当に必要としたのかが疑問が残る。

このように、『マーサの幸せのレシピ』には全体的に説明不足な部分が多く、結末もふわっとした感じで終わってしまうため、観客はやや消化不良を起こして帰ることになるだろう。

『幸せレシピ』というタイトルのわりには、料理によるカタルシスが一切ない

まず、この映画の問題点としては、全体的なテーマが定まっていないところにある。

『幸せレシピ』というからには、料理が物語において重要なファクターになると予想するだろう。母親を亡くし、凍てついた子供の心を料理で溶かす、というありきたりなオチになることを予想していたが、結果は料理はほとんど関係ない、という始末である。

作中登場する料理は見た目もキレイで実に美味そうであり、もっと丹念に観ていたい気持ちにかられるほどであるが、残念なことにほとんど画面には映らない。マーサは確かに料理にこだわりのある女性ではあるが、むしろ「こだわりを持つシェフ」という設定は彼女の頑固さを露見するだけのファクターになっていて、まったく魅力になっていない。

それどころか、彼女がシェフである必要も、レストランを多く映す必要もない。そのため、この『マーサの幸せレシピ』を料理映画として期待して観ると、ガッカリすることになってしまう。

また、ホームドラマとしても魅力が薄い。理由は、先にも述べたように主役であるマーサとリナの性格に難があるためだ。オーナーの言うことに耳を貸さず、客の要望を突っぱねてしまうマーサに同情を示す人は少ないだろう。リナもリナで可愛げが一切ない。イタリア人シェフのマリオが二人の仲を取り持ってくれたのだが、なぜ彼が他人であるマーサたちにそうしようと思ったのか、これまた説明不足であり、また観客はモヤモヤした気持ちを抱えてしまう。

マーサがリナを可愛がりたいと思うのも、父親が見つかってイタリアへ移り住んだリナを引き取りたいと思ったのも、全くマーサの気持ちが語られないために突拍子がありすぎて理解が出来ない。これならリナという少女じゃなくて、ペットを取り戻す物語のほうがまだ説得力があったのかもしれない。

せめて登場人物たちに精神的・技術的成長があればまだ見れたものの、マーサにもリナにもそれらしき変化は見られない。クライマックス(というほど盛り上がりもないが)でマーサはマリオと結婚するが、あれだけ張り合っていたシェフ同士がすんなり結婚にこぎつけるのも違和感がある。マーサの内なるものに惹かれたのかどうかは知らないが、そうならそうでやはり説明が欲しかった。

全体的に凡庸な作品。やはり、どこかにエッジを利かせて欲しかった

このように、『マーサの幸せレシピ』は、1時間40分ほどの長編映画にしては、見どころというべきところがないのが致命的になっている。

ホームドラマを作りたいのならばホームドラマらしく、感動的な演出を挿入させるべきだっただろう。反対に、料理映画としての面白さを演出したいのならば、もっと完成した料理を映したり、レシピを紹介するべきだった。マーサとマリオとの恋愛の要素もあるが、流れが不自然で、「なんとなく付き合った」というような展開となっており、ラブストーリーとしての色味も薄い。100分の尺があるなら、ホームドラマと料理、両方を目立たせることも可能だっただろうに、全てが中途半端になっている。場面の切り替えも多く、エピソード同士もぶつ切り感が多くなっているため、観客がある程度自分で脳内補完する必要があるのも辛いところだ。

とはいえ、全体的にはキチンとまとまり(納得のいくものではないが)やりたいことや伝えたいことは朧気ながら伝わってくるので、もう少し製作者側の個性やエッジを利かせた作品であればよかったように思う。

昨今、日本の映画業界は不況で知られている。2000円近く払って映画館で映画を観るには、それなりのウリがなければいけない。そういった点で、『マーサの幸せレシピ』は、よほど映画が好きな人か暇な人でないと観ることが出来ない作品であろう。

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活躍する現代女性仕事に真面目で、男性にも負けじとひたすら頑張ってきた糧に与えられたシェフとしての地位やプライド。家庭に入る女性からも、地位はなくとも仕事に励む女性からもカッコよく思える主人公マーサ。共に働く仲間からも信頼や尊敬はあるようだけど、時々みせる頑固さやふりまわされるプライドがとてもリアルで、一度は勤めたことのある方なら誰もが共感できる職場のよくある光景。この物語に引き込まれたのは、自分の子供でもなく姉の子供と共に生活をすること。今、活躍する女性の多くは、結婚や出産を考えると両立は難しいと考えるのが普通…職場だけでも器用にみせているマーサを女性としてうらやましくもあり、尊敬と応援したいという気持ちにさせられる。そんなときに現れる異性のライバルは好きではないが色々な意味で気になる存在。すんなりと優しく受け入れられないキャリアウーマンを客観視でき、不安やフラストレーションだけでなく...この感想を読む

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