観客をクギ付けにする完璧な作品
ナタリー・ポートマンから目が離せない
ナタリー・ポートマン主演の心理スリラーを描いた作品。彼女が演じる主人公ニナが、「白鳥の湖」の主役に抜擢した事から、精神に異常をきたし物語は展開していきます。
とにかく、ナタリー・ポートマン演じるニナから目が離せません。ニナは内気で臆病、ハッキリとした自分の意見も言えない女の子、見ていてイライラするのですが、彼女の魅力にはまってしまいます。ニナの心の葛藤を、演出とナタリー・ポートマンで素晴らしい作品に仕上げています。
特に注目したいのが、ナタリー・ポートマンの表情と仕草、そして彼女の回りに張りつめた緊張感が漂う空間です。先ずは、ニナの精神的に苦しむ表情を追って頂きたい。彼女が切なげな顔をすると、眉毛が下がりその切なさや苦しみを、観ている観客に伝えてきます。美しい彼女に、あの眉毛の変化を見たら、誰もが手を指し伸べたくなるのではないでしょうか?
そして、彼女の仕草と細い体です。この時期のナタリー・ポートマンはすごく痩せていますね。ブラック・スワンに対する意気込みを感じさせてくれます。物語の中の彼女は、すでに精神的におかしくなっており、数々の幻覚を見ている訳ですから、やせ細った彼女は、本物のニナのように見えました。
ナタリー・ポートマンが優れた女優であることの証である緊張感が彼女の空間には出来上がっています。張りつめた空気をその場で作ってしまう演技力と天性の才能には、目を見はるばかりです。どうぞ、ナタリー・ポートマンの世界を「ブラック・スワン」で堪能してみて下さい。
二重人格?精神病?どちらと思いますか?
「ブラック・スワン」のニナは、精神的な事は確かなのですが、それが幻覚を見続ける精神病なのか、自分の中にもう一人の自分が存在する2重人格なのか?どちらだと思いますか?私は、絶対に2重人格だと思います。2重人格を扱った映画やお話は多く存在していますが、これほど緻密で恐ろしい作品は初めてでした。
ニナの黒鳥を演じる場面で、ニナの中にいたもう一人の自分が目覚めるのです。それはたぶん、母親に抑えられ続けられた事で、彼女の中に、自由奔放で大胆なもう一つの人格を作ってしまったのでしょう。黒鳥となったニナが「今度は私の番よ!」と言う所が、きっともう1人のニナです。
この作品の特徴は、もう一人の人格として存在しているニナの出番がとても少なく、ニナ本人からの視点を中心に描いているところです。ですから、見ている人はだんだんとニナと気持ちが重なり、もう一人のニナを怖く感じてきます。
そして、黒鳥となったニナには、黒い羽根が生え、独創的に踊る。短いけれど、本当に最高の場面だと思いました。
思ったよりも官能的です
心理スリラーと言う事ですが、思った以上に官能的でした。しかし、そうする事に物語とどうつながって行くのか?という面から考えると、それほどまでに官能的にする必要があったのかと疑問を感じます。
特に、ライバル視しているリリーとの絡みの場面では、なぜ女同士でこんな事になってしまう必要があるのかと、考えました。たぶん、リリーは、自分の分身であるもう一人の人物として表現しているのかも知れませんね。
「ブラック・スワン」は丁寧に説明をせず、こちらに感じさせながら演出しているので、その分謎めいた事がとても多く出てきます。それは、単にニナのみる幻の場合もありますが、物語の核となる心理的要因を含んでいる箇所がありますので、じっくりと腰を据えて鑑賞する映画だと思います。考えながら、感じながら、楽しんで下さい。
ラストの展開は圧巻!
「ブラック・スワン」は、最後まで、物語の結末はわからず、観ている人の気持ちをグイッと持っていく映画です。本当に最後までみないとわからない事だらけなのです。
ニナが気になって仕方がないリリーが、最悪の人物なのか?それとも違うのか?それがわかる時は、ニナが黒鳥で踊ったあとです。素晴らしい黒鳥を踊り終えたニナに、白鳥姿で登場し、彼女を褒めたたえるリリーは、ニナが想像し作り出した人物とは、まるで別人です。ここまできて、観客もニナも、やっと何かに捕らわれ騙されていた事に気がつくのです。もう、気がついた時には遅いのですが。
そして、ラストの場面は、舞台の最後のシーン、映画のラストとしては最高の舞台ではないでしょうか?一つ疑問が残るとしたら、あれほどの傷を負っているのに、なぜニナは黒鳥を演じる事ができたのか?また、ラストの舞台もよく踊れたなと、少し疑問に感じました。
ニナを追いやったのは、母親自身だったのでしょうが、本当のニナを知っているのも母親です。母親がニナに接する態度は、ニナの精神病を知っているただ一人の人、そこを意識してみると、さらに面白いかも知れませんね。
一度は見ておきたい名作
「ブラック・スワン」は見ていて心苦しくなる映画ですが、一度は見ておきたい名作だと思います。ただし、お子様とは見ない方がいいのは確かですので、注意しておきましょう!
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