紛れもない傑作は酷評の嵐へ - GANTZの感想

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GANTZ

4.004.00
画力
4.33
ストーリー
4.00
キャラクター
3.83
設定
4.17
演出
4.00
感想数
3
読んだ人
9

紛れもない傑作は酷評の嵐へ

4.04.0
画力
4.5
ストーリー
3.5
キャラクター
3.5
設定
4.0
演出
4.0

目次

一世を風靡した『GANTZ』ブーム

今を遡ること数年前。実写映画化を期に、『GANTZ』の知名度が一気に増した。それに伴い、原作である『GANTZ』を読む人間も増加する。

星人と呼ばれる得体のしれない生き物との戦い。目的のわからない謎の球体ガンツ。死んだはずの人間が集められる部屋。

グロテスクな描写と、スリルある星人との戦いは人気を集め、『GANTZ』は幅広い世代に読まれた。電車のなかで高校生たちが『GANTZ』について話し合う風景が見られるなど、『GANTZ』は一時期のムーブメントとなっていたのである。

しかしながら、『GANTZ』連載終了後、当作品への酷評は熾烈を極めることになる。一時期『GANTZ』を夢中になって読んだ人々が、「あれは駄作だ」と平然と言い捨てるようになった。

なぜ、一時期あれほどもてはやされた作品がここまで落ちることになったのか。『GANTZ』の凋落の原因を考察していこう。

人気作品の凋落。最大の原因はラスト

終わりよければ全てよしーーそんな言葉があるほど、物語においては結末(エンディング)が重要視される。

どんなつまらない漫画でも、結末がキレイにまとまっていれば読者を満足させることが出来るだろうし、逆にどんな名作でも終わりがグダグダなら評価されない。『GANTZ』は、残念なことに後者だった。

『GANTZ』最終章の展開は、中期から予見されていた。カタストロフィといわれる、文明そのものとの戦い。地球よりも優れた文明を持つ星人たちとの死闘。それは『GANTZ』らしい当然の帰結であって、フィナーレとしても申し分ないはずだった。

だが、ストーリーのメインの部分はともかく、その詳細な内容が実に問題だった。

まず、終盤に全国から集まった仲間たちの活躍が、ほとんど意味をなさない。それぞれ個性づけされて、特技もあったであろうことが示唆されているのに、結局結末まで役に立たなかった。では噛ませ犬であったかというとそうでもなく、ほとんどの仲間が終盤に星人の英雄に一気に戦いに挑み、死んでいく。伏線も何もあったものではなく、文字通り履いて捨てられるように散っていくので、読者としては落胆の一言だ。

また、大団円ではあるのだが、そこも非常に中途半端である。主人公の玄野、準主人公の加藤が生還し、恋人と弟、そして地球の人々に迎えられる…ということまではいいのだが、もう少し後日談をしっかり描いてほしかった。

球体ガンツの謎も中途半端にしか解明されておらず、ガンツを知っていた一部の人々の思惑もまるで見えてこない。

全ての作品がそうである必要はないが、漫画や小説には設定・舞台設定を読むという楽しみがある。ファンタジーやSFならなおさらだ。『GANTZ』の絵以外の設定の部分がまるで見えてこず、作者は資料を集めて作品を描いていたのかすら怪しくなる。 これだけ知名度があり、人物や背景の描写がピカイチな漫画で、骨となる舞台設定の説明が欠落しているのは致命的だ。

作者が設定を考えたうえで発表しなかったのか、それとも本当に考えていなかったのかは謎だが、もう少し読者への配慮が欲しかったというのが本音だ。

結末以外は完璧だっただけに、惜しい

残念な結末で酷評を受けた『GANTZ』だが、逆にいえば酷評は期待の表れであり、結末以外の部分が素晴らしかったことにある。

まず、どことなくシュールで不気味な星人のデザイン。特に初期はずば抜けていて、田中星人やおこりんぼ星人など、見た目がシュールな生き物たちに登場人物たちが無残に殺されていく様は、目を覆いたくなるほど悲惨だった。

もう一つは、キャラクターのそれぞれの生きざまが魅力的であることだ。これについては、『GANTZ』読者それぞれ熱い思いがあるのではないだろうか。

愛する加藤の胸のなかで力尽きながら、今わのきわに告白した岸本。平凡なサラリーマンでありながら戦いに挑み、若いメンバーたちの精神的な柱になったおっちゃんこと鈴木。まるで活躍できない自分を卑下しながらも、鈴木に励まされ凄まじい奮闘を見せて散った稲葉。

凄惨な戦いに挑みながら、それぞれの誇りと思いを胸に散っていった彼らの姿は、あまりに悲しい。

このように、毎回毎回誰が生き残るのかわからない展開も、読者の目を惹き付けた。気に入ったキャラクターの生死に一喜一憂出来る、まるで戦争映画を観ているような楽しみ方が出来る漫画なのである。

アクションシーンもずば抜けており、玄野たちがどうやって星人を倒すのかも見どころとなっている。筆者が一番好きなのは大阪編のホストざむらい(公式か定かではないが、氷川という名前が一時期通っていた)対般若である。般若と小面の連携攻撃に翻弄されながら、ホストざむらいが般若を一刀両断する様は圧巻の一言だ。

このように、『GANTZ』はストーリー、デザイン、画力など全てにおいて高水準の漫画で、名作と呼ばれてもいい作品だ。

しかし、先に述べたように結末が不十分だったために、一つの漫画として良い評価がされていない。これは非常に残念なことだ。

『GANTZ』の連載が終わってもうすぐ三年になろうとしている。叶うならば結末が加筆された完全版という形で世に出て、再評価を受けて欲しいと筆者は思う。

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他のレビュアーの感想・評価

極限状態に追い込まれた人間が見事に描かれている作品

容赦ない残虐描写。主要人物もあっけなく死んでしまう、緊張感。GANTZはその第一話からこの先読み進めていいのだろうかと思うシーンに遭遇する。主人公の玄野計と、玄野の友人加藤勝が地下鉄に轢かれて轢断されてしまうのである。まるで著者が臨死体験をしたことがあるのではないか、実際に轢断された人を見たことがあるのではないかと思うほどのリアルな描写に、その場にいるような恐怖を覚え、この漫画が表現したいことは何なのだろう?と序盤から読者は恐怖のどん底に落とされたような気分になる。また、同時に玄野と加藤は酔っぱらった人がホームから転落したのを助けようとして列車に轢かれてしまうのだが、いいことをしてもそういう不幸に見舞われてしまうという、神や仏などこの世にいるのだろうかという「いい人だから報われるわけではない」という厳しい現実も突き付けられ、それが著者奥浩哉氏特有の「不条理ワールド」らしい出だしとなっている。...この感想を読む

4.54.5
  • tamamatamama
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  • 2093文字
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