SFアクションの真なるメッセージ - ターミネーターの感想

理解が深まる映画レビューサイト

映画レビュー数 5,784件

SFアクションの真なるメッセージ

4.04.0
映像
3.5
脚本
3.0
キャスト
3.5
音楽
3.5
演出
3.5

目次

伝説的タイトルの幕開け

『ターミネーター』シリーズの名を聞いたことがない人はいないだろう。機械兵士ターミネーターは、革命軍のリーダーであるジョン・コナーの存在そのものを消すべく、ジョン・コナーの母親、サラ・コナー抹殺のために動き出す。まだ結婚もしていないサラは英雄の母となる未来を告げられ戸惑いながら、未来から来たジョンの部下、カイル・リースに守られターミネーターから逃げていく…というのがおおよそのストーリーだ。

アーノルド・シュワルツェネッガー演じるターミネーターは冷酷無比な敵役で、人間を殺すことになんら躊躇いがない。執拗にサラを狙い、警察や同姓同名のサラ・コナーまでも殺していく。サラの母親の声を騙り、電話を使ってサラの居場所を聞き出すシーンは、見た者をゾッとさせただろう。

低予算でありながら世界中で大ヒットした『ターミネーター』は、のちにシリーズ化し、第一作目から三十年経った今でも新作が作られるほど人気が持続している。

『I'll be back』はなぜここまで有名になったのか

『ターミネーター』の代名詞といえば、ターミネーターの有名なセリフ「I'll be back」であろう。

しかし、その知名度とは裏腹に、「I'll be back」はさほど重要なシーンで使われた言葉ではない。警察署の受付で門前払いされたターミネーターが、「I'll be back.」(また来るよ)と告げて数瞬ののちに車で突っ込んで戻ってきた、そのシーンでの使用というだけである。主役のサラもカイルも関係のない、命のやり取りもない、ごくわずかなやり取りがなぜここまで知名度を上げるに至ったのだろうか。

たとえば、次作『ターミネーター2』の「Hasta la vista, Baby!」(アスタ・ラ・ビスタ、ベイビー!)は文句のない名セリフといえるだろう。同じくターミネーターシリーズであるT-1000に銃口を向けたT-800が、少年ジョン・コナーに教わった”人間臭い”セリフで引導を渡す。溶鉱炉に親指を立てて沈んでいくシーンも相まって、一作目で恐怖の象徴だったターミネーターが、人間の心に触れて成長したと思わせる感慨深いエピソードになっている。

そういったエピソードもない一作目の『ターミネーター』で、果たして「I'll be back」は見た者の心に残るような特別目立ったセリフだったのだろうか。

答えは「NO」だ。おそらく、『ターミネーター』第一作目公開当時においては、それほど「I'll be back」は見たものの心に残るセリフではなかったはずだ。

しかし、二作目でT-800が「I'll be back.」(すぐに戻る)と告げたことから、T-800の決め台詞として定着し、ひいては映画『ターミネーター』の代名詞に変わっていったのではないだろうか(ちなみに二作目でも大して重要なシーンで「I'll be back.」と言った訳ではない)。いわば「I'll be back.」は、T-800の口癖のようなものである。

作品の面白さとT-800の口癖という条件が重なって、「I'll be back.」は映画『ターミネーター』を見たことのない人にすら知られる宣伝文句となった。これは筆者の仮説ではあるが、もしそうだとしたらかなり面白い現象に思える。

見どころはアクションなのかラブストーリーなのか

さて、名作で知られる『ターミネーター』の見どころは一体なんであろうか。人によっては、アクションだといい、別の人によってはSFだと答えるだろう。

しかしながら、監督であるジェームズ・キャメロンの作品の根底にあるのはラブストーリーだという。

『タイタニック』がラブストーリーであることはもちろん疑いようもないが、今作『ターミネーター』や『エイリアン2』がラブストーリーだと言われても、ピンとこない人は多いだろう。

しかし、『ターミネーター』がもっとも伝えたいのは、間違いなく人間の愛の物語だ。

第一作目に絞っていえば、タイムトラベル型のラブストーリーといえるだろう。未来から来たカイルは、ジョン・コナーに写真を渡され、自分が生まれる遥か前に生きていた女性ーーサラを、ずっと想い続けている。サラは想像も見えぬ未来の先で戦う彼を想い、二人は結ばれる。結果ジョンが生まれ、成長して英雄となったジョンは父となる少年(カイル)に母の写真を渡す。

この壮大なラブロマンスを味わうために、視聴者が共感を寄せるべきなのはジョンだ。未来で出会った少年からカイルという名を聞いたとき、彼はどんな思いを抱いただろうーー。そして母のいる過去に彼を送るとき、去来した思いは。時空を超えた愛のなかで生まれた自らの出生を、彼はどう思っただろうか。

ジョンの目線で観ると、『ターミネーター』の真の面白さ、すなわち愛の物語が透けてみえる。作中には登場しない人物の感情を推し量り、楽しむ。そしてその答えは、一流の制作陣と熱心なファンのおかげで、『ターミネーター』シリーズ正統続編という形で観ることが出来るのである。

ジェームズ・キャメロンが『ターミネーター』に込めたメッセージを読み取ったとき、視聴者はもう、次のシリーズに伸びる手を止められない。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

他のレビュアーの感想・評価

感想をもっと見る(17件)

関連するタグ

ターミネーターが好きな人におすすめの映画

ページの先頭へ