葛藤があるからこそ友情の絆は深いのかも
植物を使った染色家の道を志す蓉子が祖母から引き継いだ古い日本家屋に、機織りを学ぶ美大の大学生である紀久と与希子、日本文化を学び、鍼灸師を目指すアメリカ人のマーガレットが下宿することになったことから、物語が始まります。 若い女性4人の同居生活は、一見、ままごとのように和気あいあい、楽しく、明るく、夢にあふれていました。機密性のあるおしゃれなマンションでの下宿のように自由で気ままというわけにはいかず、それぞれが少しずつ譲歩し、責任も分担しなくてはいけません。しかし、その分、楽しいことを見つけ出す機会もずっと増えていきます。 しかし、まるで織物の縦糸と横糸のように不思議な縁で交わった彼女たちの人生は、とっくの昔に置き去りにしてきたはずの因縁を明るみに出していきます。祖先たちが経験した苦しみに、現代の彼女たちが抱える葛藤が色を添えて、4人はそれぞれ心を痛めるのです。それでも、彼女たちの心は離れることなく、時に対立しながらも、支え合って困難を乗り越えていきます。 物語の中で、特に印象的なのが、家主である蓉子と彼女の人形『りかさん』です。重く痛ましい過去も、現代の生々しい葛藤も、2人が心に受け止め、大切に抱きしめて、そっと送り返してくれると、なぜか温かいものに変わっているのです。 現代社会で失われ、見直されつつあるスローライフや人と人の絆を見つめ直す素敵なお話です。
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