白夜行の感想一覧
東野 圭吾による小説「白夜行」についての感想が8件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
幸せになってほしいと願う
一人の少年と、一人の少女の物語。 彼らは、お互いのために殺人を重ねていきます。 そうしなければ生きられない。選択肢が一つしかない。そんな風に追い詰められていくのです。 でもこれは、純愛の物語だと思います。 人を殺してはいけないけれど、それだけで裁かれるには、彼らは純粋すぎたのだと思います。 どうか、見つからないようにどうか幸せになってほしいと願うのですが、その願いは神様には届きません。そして、少年は・・・ 殺人を犯す前に、誰か他の大人たちが彼らを助けることはできなかったのか、そこが悔やまれてなりません。 その残酷さが、この世の常なのですかね。 最後の最後には、どうか笑って人生を過ごすことができますように。 そう思います。
毒
タイトルに「古さ」を感じました。なぜか?それは日本語の本来の美しさがタイトルになっているからだと思います。この作品は時間軸がかなり長いので、登場人物がなかり多いです。自分が主人公のような心理状況になることが多い作品だったので、問題に対して、どうするのか問われ続けているような苦しさがありました。読んでいて、しんどかったです。笑そして、この作品は、なにか、ボクの中の「毒」を描いているような、投影されているような気分になります。しかーし、少し前の作品なので、なんとなく、テレビなどを通して謎がわかっている状態で読んだので、オチが途中でわかってしまったのが残念でした。でも、面白かったです。
人間の持つ儚さや冷酷さ、狂おしいほどの切なさを感じる作品
ラストシーンがあまりにも切なく、この女性は本心ではどういった心境なのかとそのところだけ何度も読み返してしまいました。犯罪に手を染め闇の中で生きる者と、その闇の支えを一身に受け本心を押し殺し輝き続けることが全てと表舞台に立ち続ける者。本来であれば許される行為でも共感できる行為でもないのに、この両者が抱え込んでしまったものを少しずつ垣間見てしまうたび、責めることができなくなってしまう自分がいました。それぐらいこの二人の関係性と心理描写が少しずつ繊細に描かれていてその構成力と表現力に驚かされます。そのふたりに関わっていく人々もきちんと役割や意思をもっていて、だからこそ二人と関わることで人生の歯車が軋んでいく様があまりに切なく・・・。人間の儚さや強さをじわじわと見せつけられる作品でいした。
せつない…
幼い子供が一つの事件をきっかけに、さまざまなことが次から次へと起こる展開。東野圭吾シリーズの虜になるきっかけになった作品。長いストーリーではあるが、まったく飽きることのない物語。人の冷淡さ、生きざま、心奥に秘めて閉ざしてしまっている二人の人間模様。本当の自分を偽りながら暮らしていく苦しさ、全ての冷ややかな状況を上手く文章化されている。女の子の周りでは必ず何かが起こる…。彼女の本当の姿はいったいどういうものなんだろう、何を考えているんだろう、と考えてしまう。映画やテレビで放映されたか 、是非小説で読んでほしいなと思う。東野圭吾シリーズの中でも、長く奥深い内容である。
東野圭吾の名作
大阪にある廃墟ビルにてある人間が殺された。その殺された人間は質屋をやっている人物だった。物騒な世の中ですね。操作の結果犯人は捕まらなかったが、質屋の息子と容疑者と言われた西本文代氏の娘、雪穂。警察は一体何をしているんでしょうか。まぁその二人の周りにはなんともいえない不気味な空気が放たれていて、どんどん物語は深い事件に巻き込まれていく。物語の中には多種多様な人々が出てくるのですが、そのひとりひとりの人生が最後にはひとつの物語へと収束していくため、著者の技術力に圧倒されてしまいました。読み終えたあとやっぱりすごいなこの著者はって一人で感心したくらいです。やっぱりいかに表現するか、いかに文章で人に想像させ伝えることができるか。巧みに計算されているこの物語。本当に凄まじいし感動ものです。一つ一つの物語に文才を感じさせられる一方でほんっと書き手としても読み手としても学べるものだと思いました。私も...この感想を読む
この女、こわい…。
長くて、なかなか読む気がしなかったのですが、何となく読んでみたら結構はまりました。とにかく、雪穂がこわい。何を考えているのか、最後までよくわからないところが、余計にその「こわさ」を引き立てていました。映画やドラマも観ましたが、やはり原作である小説が一番ですね。雪穂の美しさは、想像の世界のものであってほしいから。堀北真希や綾瀬はるかが演じてしまうと、キレイではあっても人間らしさが出てしまう…。いまいちわからなかったのが、この話はラブストーリーなのでしょうか?雪穂は本当に人を愛することができていたのか、それともただ冷酷なのか…それが気になります。
強く儚いものたち
まさに、『強く儚いものたち』 の半生。幼いからこそ純粋に、事件を受け止めた二人。それを痛いくらいに感じ取ったからこそ、二人に生涯を掛けた刑事。こんな筈じゃなかった。どうしてこうなってしまったのか。自責の念に苛まれる両親達。初見から年月が経って、私も『大人』『親』と呼ばれる世代に入ってきた。だからこそ、今ならきっと、違う視点、違う感情で、読めるのではないだろうか。大きな決意で取った、文字にすると些細な行動が、人生そのものを変えていく壮大さ。私は、感情移入しやすい方だと思うのだけど、この作品には入り込めなくてでも、心を圧迫されるような感覚は、とても不思議で、切なかった。タイトルに違わず、冬の夜が良く似合う。長い長い、冬の夜に、どっしりと構えて読みたい。そうすれば、ふと顔を上げると、彼らが外を歩いているような。そんな感覚を味わえる。かも。
人と人が関わり合うとき、こんなことにもなるなんて。
殺人事件の被害者の息子と、容疑者の娘である少女。ふたりは生きていくために、罪を冒し続けていった…。ドラマ化、映画化もされましたが、やはり本書は文章で是非読んでいただきたい、と愛読者の一人として思います。とくに東野圭吾ファンでもなかった自分が、ほとんどイッキに読み、ここから東野読書をスタートさせた作品です。本文は淡々と第三者的視点から描かれ、主人公二人の心中はあえて語られない構成になっています。部分的には、トリック(というか、犯罪の手法)にやや無理を感じるところもなきにしもあらずですが、20年もの時間の流れを書き切り、そのなかにいくつものエピソードをちりばめ、関連付けた、ストーリーテリングにはただただうならされます。人と人が関わり合うことで起きることって、こんなに波及するものなのか!と、ぐねぐねしていくストーリーに目が離せなくなってしまうのです。ラスト近くになってくると、主人公がやっている...この感想を読む