運命的な、また境遇的な意味では、おまえは自分より不幸な人間だが、性格的にいうとはるかに幸福な人間だ
時任信行
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主人公時任謙作は結構不幸を気にしているキャラとして描かれている。祖父と亡き母の子として生まれ、それが影響して望む女性との結婚もかなわない、という点では辛いと思う事はあるだろう。しかし、本当に彼が感じているほど不幸なのだろうか?それほどに「暗夜行路」だろうか?現代の若者目線で見ると、実は彼はかなり恵まれているとも言える。ちょっとネタミ目線でその状況を上げてみよう。そこそこ金持ち、時任謙作前半で芸者登喜子の事を兄弟で話す場面があるが「金がかかるぞ」と兄から笑いながら言われる。キャバクラに1回行ってみる、というレベルではなく「深入りする」前提の話だけにちょっと現代の若者には考えられない感覚だ。また、謙作は父との不仲を考慮し、断絶しようかと考えるが金をもらっていることが気にはなっていた。嫌いな父だが金だけは受け取る、という状況を彼のモラルが許さないのだろうが、実は母の実家から出たものと知って安...この感想を読む
時任信行
母と祖父との間に生まれた不義の子であることを嘆く弟を、自らの心情を吐露して励ました