闇の守り人のあらすじ・作品解説
闇の守り人は1999年7月に偕成社から刊行された上橋菜穂子によるファンタジー長編小説である。1996年7月に刊行された「精霊の守り人」からはじまる「守り人」シリーズは全10巻と短編集で構成された一大巨編であり、本作はシリーズ第二弾にあたる作品である。前作は第34回野間児童文芸新人賞、第44回産経児童出版文化賞、本作では第40回日本児童文学者協会賞、路傍の石文学賞、「守り人」シリーズでは第25回巌谷小波文芸賞など刊行するたびに数々の賞を受賞しており、国内外で高く評価される作品である。 新ヨゴ皇国のチャグム皇子の護衛を無事に終えた女用心棒バルサは、人生のすべてをかけて自分を守り育ててくれた養父の汚名を晴らすべく25年ぶりに生まれ故郷に戻る。バルサの帰郷とともに明らかになる魂の物語は、人と精霊が混在する世界を舞台に壮大なスケールで繰り広げられる。 「守り人」シリーズはフランスをはじめとする各国で翻訳刊行され、コミック化、アニメ化されており、2016年にはテレビドラマで実写化される。
闇の守り人の評価
闇の守り人の感想
NHK大河ファンタジー原作小説
2016年3月から放送が始まったドラマの原作小説です。この作品は、上橋菜穂子さんの「守り人」シリーズの2作目の作品です。上橋さんは、学者であると同時に作家です。児童文学に分類される作品ですが、大人でも十分に楽しめる心わくわくする作品です。はじめて、上橋菜穂子さんの作品を読まれる方は、ドキドキしながらファンタジーの世界にひきこまれることでしょう。学者としての知識が作品に生かされている作品で、異世界ファンタジーにふさわしい世界観を表現されています。通勤時に、全シリーズを読破しました。あっというまに読み終えます。この作品は、女用心棒のバルサと養い親のジグロの二人に焦点が置かれています。大人になったバルサが過去と向き合う、過去と向き合うからこそ、紡ぎ出される感情が伝わってきます。人は過去と向き合うことによって、はじめて、未来への一歩と過去との決別をつけるのではないかと考えさせられる表現が随所にでてき...この感想を読む
バルサの物語
精霊の守り人シリーズの2作目です。精霊の守り人以後の話で、バルサが久しぶりに生まれ故郷のカンバル王国に戻ってきたことからも物語は始まります。前作でもちょっと出てきたと思いますが、バルサの育ての親のジグロとの話。こんな風に故郷を追われて、こんな風に育ったのかと、バルサの幼い頃の話を詳しく知ることが出来ます。それから、ジグロの事も。養父ジグロの汚名を晴らすため、奮闘するバルサの姿に最後は思わず涙がこぼれました。前作も素晴らしく面白い作品でしたが、今回もとても素晴らしい作品だと思います。もしかしたら、前作以上に面白いかもしれません。私は大人になってから読みましたが、これは子供の頃に読んでおいて間違いない作品だと思います。
祖先がいるから自分がいることを実感
守り人シリーズの中でも、大人の評価が高いと言われている作品ですが、それも納得です。主人公、バルサが自分の過去と向き合いつつ、精霊との関わりを断絶するような利己的な計画を阻止する物語で、バルサの生い立ちや抱えている闇・哀しみが明らかになっていきます。そして、同じ闇と哀しみを抱えたまま死んだ育ての親、ジグロと、不思議な儀式の中で再開し、互いの思いをぶつけることになるのです。それは、過酷な運命の中で育まれた絆の再確認であり、大切な人を思う気持ちこそが貧しい祖国に富をもたらす宝石の正体であることを知ります。現実世界にはもちろん、先祖の魂が守る精霊が生み出す宝石はありません。しかし、家族――血のつながりではなく心でつながる家族の絆が自分を支えていることを実感させてくれる一冊です。この世に生を授けてくれたのも、ここまで育んでくれたのも、家族であり、そこに続く先祖であり、自分ひとりで生きてきたわけで...この感想を読む