読んでよかったとつくづく思えた作品
お涙頂戴ものだと思い込んでいたのでこういう「若年性アルツハイマー病」をテーマにしたものが一時期多くあった。映画しかり小説しかり。その全てがお涙頂戴のものに感じられて、個人的にこういう系には一切手を出していなかった。だけど荻原浩の作品の中では比較的異色だし、だめだったらすぐにやめようと思いながら手に取り読んでいった。結果、お涙頂戴の仰々しい感情を煽るような文章は描写などは一切なく、ただ淡々と物語が進んでいくもので、しかしその淡々とした中に悲しさや恐怖、あせりなどが十分に感じられ、結局あっという間に読んでしまった。この物語は終始主人公である佐伯の一人称で進んでいくため、周りの人の感情はあまり描写されない。妻や娘などの表情などは描かれていても、その感情までは書かれていないので、それがいわゆるお涙頂戴ものになっていない大きな理由だと感じた。社会からのあせり、気づかれまいとする不安もともとは小さ...この感想を読む
4.04.0
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