人は時に、健気に生きているだけで、誰かを救っている事がある。
湯川学
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『容疑者Xの献身』は、東野圭吾による推理小説『探偵ガリレオ』シリーズの第3弾にあたる長編作品。 花岡靖子とその娘、美里の親子は、靖子の元夫である富樫を大喧嘩の末に殺害してしまう。その後に起こる事態を想像して憔悴する花岡親子に、隣人であり、靖子に恋心を抱く天才数学者、石神哲哉が救いの手を差しのべる。天才的な数学の才を持ちながら、高校の数学教師に甘んじる石神は、愛する女性のために完全犯罪の計画を決意する。事件を追う刑事、草薙はあと一歩のところで真相を掴めず、友人である物理学者に助けを求める。草薙に助けを求められた天才物理学者、湯川学は、始めは事件に興味を示すことは無かったものの、大学の同期であり、自身に「天才」と言わしめた石神が犯行に関係しているということを知り、独自に解明に向けて動き出す。 「第6回本格ミステリ大賞」、「第134回直木三十五賞」を受賞しており、主人公である湯川役に福山雅治、対決する天才数学者、石神役に堤真一を迎えた映画化がなされるなど、高い評価を受けている作品である。
私が誰かを殺してしまったとき、誰かがそれを隠蔽してくれるといったとしたら?もしくは誰かがその罪をかわりにかぶってくれるといったら?その相手が、自分の肉親でもなんでもない男だったとして・・・・。そう考えたとき、容疑者Xの献身ぶりよりも真犯人の身勝手さ・浅はかさのほうにより強く意識が行きました。フィクションだからと言ってしまえばそれまでですが、そんな申し出を受けてしまえるのが納得がいかないです。それをネタに一生強請られたり、罪悪感を抱えて生きていく方がよっぽど辛いと想像するのに難くはありません。愛することに不器用で、こんな表現しか出来なかった男。悲しいですね。
湯川教授の登場するシリーズの初の長編作品。主人公は高校数学教師で、湯川の学生時代の友人。母子で暮らす隣人が犯した殺人事件を隠蔽するために、自らも別の殺人を犯して彼女達を庇おうとする。湯川が友人の犯した罪を暴く。どうしてそこまでして・・・と、悲しくなる犯罪である。生きる希望を失っていた主人公が、微かな生きる希望を与えてくれた隣人のために殺人を犯す理由が物悲しい。加害者に同情の余地を与えるような物語は好きではないのだが、理由や言動どれもがとにかく悲しく、涙が出る。虚無感というのだろうか。小説・映画どちらもとても面白く、それぞれ楽しむことができる。好きな作品だ。
ガリレオシリーズの中の一作ではあるが、物理学者湯川の側面よりも、一人の人間としての湯川の側面が表に出てくる今作。トリックに科学の一面がないわけではないが、人を思う気持ちがここまで大きなものになり得るのか、と感動すら覚える一作。他人を助けるために、ここまでのことができるのだろか、しかも見返りもなしに……。読後は、ラストのどんでん返しも驚きだが、この内面の問いの方が大きくなっていく。天才物理学者vs天才数学者、と煽りがつくことの多い本作だが、帝都大学(立ち位置は東大か)と高校の教師、スマートな湯川とだるまの石神など、ポジションもスタイルも、対比されて描かれている。映画化されるとき、堤真一が石神と聞いて、かっこよすぎる…と思ったが、これがまた、凄まじい好演で、ぴったりなのだ。少し老けた感じを出すために、前髪を抜いて額を広くしたという。映画もおすすめできる、傑作です。この感想を読む
よみがな:ゆかわまなぶ ニックネーム:ガリレオ(先生) 性別:男 国籍:日本 所属:帝都大学 理工学部物理学科第十三研究室 性格:偏屈 趣味:バドミントン 苦手なもの:子供 学歴:帝都大学理工学部卒業 好きな飲み物:インスタントコーヒー 得意な科目:物理
湯川学
犯人である石神が、女性の殺人を庇い罪をかぶろうとしたが、トリックが見破られて悲しい結末になった場面。