とりかへばや物語のあらすじ・作品解説
とりかへばや物語は、平安時代の後期頃に成立したと見られる4巻からなる物語であり、作者は未詳である。「無名草子」などの記述から、「古とりかへばや」といわれるより古い形のものと、それを改変した「今とりかへばや」といわれる物語があり、現存している物語は改変後の「今とりかへばや」の方とされている。 内向的で女性的な性格の兄と快活で男性的な性格の妹である異母兄妹がいて、父はその性格から二人を「とりかへばや(取り替えたい)」と願い、兄を姫君、妹を若君として育てることにした。二人はそれぞれそのまま出世街道を進むが、若君が女性であることを見破られ数奇な運命をたどっていくという物語である。 男性と女性の立場が入れ替わるという設定の物語の原典として知られており、内容的に異端視されることが多かったが近年においてはジェンダー問題などの視点から再評価を受けている。 現代語に訳したものが各出版社から出されているほか原文も講談社学術文庫などで読むことが可能。また、現代風にアレンジした小説や漫画作品なども作られている。
とりかへばや物語の評価
とりかへばや物語の感想
1000年前、時代の先を読む
今から1000年前の平安時代、当時としてはトンでもない物語が成立した。現代でもライトノベルやケータイ小説などをイロモノ扱いする一部の輩は存在するが、『とりかへばや物語』のインパクトは時代背景からしてその比ではない。平安貴族の子どもたちがそれぞれ男装・女装して宮廷に潜り込み、さらにドロドロとした出世競争やら恋愛関係が加わるものだから、当然奇想天外・破廉恥極まりないとして多方面から「生理的に受け付けない」として酷評されてきたのは想像に難くない。しかし、である。1000年を経てようやく時代が追いついた。今や異性装ストーリーはひとつのジャンルとしても確立し、この手の作品はごまんと発表されるご時世となった。現代的な視点でこそようやく日の目を見た古典ともいえる。時代の先駆者はどこの世界にもいるもので、後世の作家は1000年前の発想をも越えなければ模倣となってしまうのだから大変ではある。この感想を読む