火星年代記のあらすじ・作品解説
火星年代記は、1950年に初めて出版されたSF小説である。 著作者はアメリカの作家にして詩人のレイ・ブラッドベリ。SF作家であると同時に、幻想作家、怪奇作家としての顔を持つブラッドベリ特有の文体と叙情的なストーリーが話題を集めた。日本国内では1963年に日本語翻訳版として早川書房より出版されている。 火星への進出・探検を推し進める人類と、火星人の対立をストーリーの根幹に描かれた短編オムニバス形式の小説。年代記、というタイトルの通り、全26の各話には1999年1月から2026年10月までの年月がつけられ、ストーリーもそれに準じた構成となっている。ただし、改訂版の発表と共に各話年月は変更されている。 本作は火星探検を舞台としつつも、執筆当時のアメリカ社会に対する風刺的な小説となっている。50年代の物質主義が浸透した文明社会を批判し、火星を一方的に開拓しようとする人類のアンチテーゼとして、人類よりも小柄で繊細な火星人が描かれている。
火星年代記の評価
火星年代記の感想
精神的に...
タイトルからして、SFです。どう見てもSF小説です。「火星」という文字が入っていると、なんでもSF小説に見えてしまいます。実際、これもSF小説ですが...内容はおかしくて、なぜかきれいな世界観でありながら、著者の工夫によって面白い場面が多かったです。「おめでとうを言わせてくれませんか。あなたは精神病の天才だ!」この言葉なんて意味がわからない一番ワードです(笑)一方で、文明が発展した未来の地球人の動向がリアルに描かれているような気もして、まったく、現実味のない作品というわけでもないところが、また良いです。かなり、おすすめのSF小説です。
SFらしい世界観
言わずと知れたSFの大御所、「華氏451」などでも知られるレイ・ブラッドベリの代表作のひとつ「火星年代記」です。元祖SFらしい、イマジネーションとレイ・ブラッドベリらしい美しい抒情的な文章が印象的な作品です。今、SFというとたんなる科学っぽい、理屈を並べて戦争するみたいなイメージが有りますが、元来SFとは論理思考とイマジネーションのコラボレーションだということを思い出させてくれます。火星の科学的な考察ではなく、人間の考察という究極のところのSF作品です。かなり、エッジが効いていて心に積まさるる部分があります。さすがレイ・ブラッドベリの洞察力と想像力はすごいです。
連作短編で読む火星物語
「年代記」というタイトル通り、いくつかの短編がまとまっていって「火星年代記」という全体を構成しています。火星に移民した地球人が現地の火星人との関わりあいがテーマとなったり、火星人が相手の願望を写しだす姿に変化する能力があったり、地球の核戦争など、一篇一篇が独立した話としても楽しめます。典型的なSFの設定ながら、ミステリ的な味わい、文明批評、ホラー味など多彩でそれぞれに面白い話がそろっています。ブラッドベリには他の短編集でも恐怖小説やリリカルな作品など多様な作風を持ちますが、それが一冊にまとまったと思わるとわかりやすいです。どちらかと言うとブラッドベリの叙情的な側面は本書では抑えられています。