表現力の探検家、小川洋子
作品背景本作は2001年から2006年までに書かれた小川洋子の短編集だ。寄稿誌、時期も特に統一性は無く、テーマの一環もないので純粋かつニュートラルに小川氏の短編を楽しむ、というスタイルで読むのが最適だと思われる。特記するとすれば「ひよこトラック」が2006年、「ガイド」が2001年発表で、それ以外は全て2004年の作品だ。2004年と言えば今や代表作となっている「博士の愛した数式」(発表は2003年)が本屋大賞と読売文学大賞を、「ブラフマンの埋葬」が泉鏡花文学賞を受賞している。1991年の芥川賞受賞で作家としては十分に著名な彼女だったが、特に本屋大賞というわかりやすい評価を受けたことと、「博士の愛した数式」のヒットで一気に一般社会に認識された年と言っていいだろう。「博士の愛した数式」と「薬指の標本」の映画がともに2006年に公開されており、製作の都合から考えてもオファーがあったのはこの...この感想を読む
3.53.5
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