この世には不思議な事など何もないのだよー
中禅寺秋彦
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京極夏彦の「魍魎の匣」は、古本屋兼拝み屋の京極堂が活躍する「姑獲鳥の夏」に続く、シリーズ第2作目の作品だ。このシリーズは、昭和二十七年の東京を中心に展開する、博覧強記の古書店店主にして武蔵清明社の神主として、副業に陰陽師として働く京極堂こと中禅寺秋彦の周りには、鬱病傾向のある小説家の関口巽や、人の記憶が見える変人探偵の榎木津礼二郎、頑固一徹な刑事の木場修太郎など、一癖も二癖もある連中ばかりが集まって来ては、事件に巻き込まれていく。シリーズ第1作目の「姑獲鳥の夏」では、二十か月もの間、妊娠し続けている女性の夫が失踪した事件を追い、「この世には不思議なことはなにもないのだよ------」と言う京極堂の決めゼリフが出て来るのもこの作品からだった。この「魍魎の匣」では、「姑獲鳥の夏」で多少気になった情報の見せ方と謎解きのアンバランスさが取れた、我々ミステリ好きの常識を見事に逆手に取った驚愕のラストで、...この感想を読む
よみがな:ちゅうぜんじ あきひこ
中禅寺秋彦
夢と現の境界線を見失いがちな語り部である関口君に、諭すように憑き物落としを副業としている京極堂(中禅寺)が言う台詞