有頂天家族の感想一覧
森見 登美彦による小説「有頂天家族」についての感想が5件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
森見登美彦のボキャブラリーを駆使した、古風で斬新な文体で魅了する「有頂天家族」
桓武天皇の御代、万葉の地をあとにして入来たる人々の造りあげたのが京都である------と、これはあくまで人間の見た歴史だ。狸に言わせれば、平家物語に出てきた武士、貴族、僧侶のうち、三分の一は狐で、三分の一は狸で、残り三分の一は狸が「一人二役」でこなしたのであるし、天狗に言わせれば、王城の地を覆う天界は、古来、彼らの縄張りであった------?!。森見登美彦の「有頂天家族」は、実に人を食った出だしの小説だ。京都には今も、人間と狸と天狗が「三つ巴」で暮らしているというのだ。いやあ、実に食えない、食えない。この作品は、あのジェントルでいけずで奇っ怪な「京都ホラ話」にして、時代を超えたラブ・コメディの傑作「夜は短し歩けよ乙女」で、人気が爆発した著者による長編小説だ。この作品でもまた、著者がテリトリーとする京都の街を舞台に、著者十八番の「偽電気ブラン」や「腐れ大学生」が登場し、怪しいキャラクターがぞろぞろ。な...この感想を読む
こういうのが、もっと読みたい
ファンタジーの匙加減この作品は、大抵の場合、ファンタジー作品ということになると思うのだが、ファンタジーという分類も、今となってはSF同様に大項目でしかなく、新しく好みの作品を見つけるのは至難の業だ。そうなると、好きな作家の作品をラインで読むことが必然的に増えるわけだが、森見作品は期待を裏切らない。ハイファンタジーも悪くはないが、私は森見作品のファンタジー加減が大好きだ。可愛いモフモフが活躍するとなればなおのことだ。ファンタジーの中のリアルネット上ではスマホで読むのに適したようなライトテイストなファンタジーがランキングを独占しているし、そういう作品も楽しいけれど、どちらかというと、誰かが死んでもすぐ生き返ったり、攻撃を受けても痛そうじゃなかったりする作品よりは、本作のように、荒唐無稽な設定のはずなのに、キャラクターの一人がスネただけでハラハラしたり、父狸が鍋にされてしまったという過去が、...この感想を読む
狸っていいね!
これ、面白い(笑) 狸VS人間VS天狗京都を舞台とした、狸と天狗と人間という不思議な組み合わせ人情味溢れるお話。狸と天狗だから人情味と言っていいかは別として、森見登美彦の独自のオタクじみた味のある文章から繰り広げられる、ほっこりとした面白ファンタジーです。毛玉達が発する「面白きことはよきことなり!」の言葉から様々なおかしな展開にストリーが発展していきます。スピード感もあり、落としどころ、しんみりする場面のバランスが絶妙にいい感じ。金曜クラブ、美しい弁天様、色ぼけ天狗とゆるゆるの狸たちが複雑にからみ合う人間模様?がなんだか懐かしいやら、肩の力が抜けるような「人生たいした問題なんてない」と思わせてくれる癒系作品。小説を読んだあとにアニメも見ましたが、イメージが具現化されてさらに面白かったです。続編が出ているので、次は愛らしい毛玉たちがどんな風に楽しませてくれるか期待しています。奇想天外のストリ...この感想を読む
とにかく読んで!
とにかく読んでほしい一冊です。文体は森見さん特有の高尚な文体ながら、書いてあるのは京都に住む「タヌキ」の話。森見さんの書くタヌキは、化けるのが大好き、いたずら大好き、そして登場人物、誰も彼もがまごうことなき阿呆です。物語の舞台は京都下鴨神社、糺ノ森。主人公(タヌキ)の矢三郎の父は、「金曜日倶楽部」にタヌキ鍋にされてしまいます。その偉大だった父は、タヌキの四兄弟に平等に能力をわけました。長男矢一郎には真面目さを、矢二郎には愉快さを、矢三郎には阿呆さを、そして矢四郎には臆病さを。その愛すべき「毛玉」たち家族の奮闘と、それをとりまくタヌキや奇想天外な天狗が関わってくる不思議ワールド全開の物語ながら、わいわいがやがやの話かと思えば、大どんでん返し、ホロリと泣ける家族の話も入っています。読んでいて思わずガッツポーズしてしまうシーンもあったりして、爽やかな読了感はピカイチです。森見さんの世界観は、...この感想を読む
毛玉ワールド。
森見さんらしい、京都を舞台にした物語。京都の街を知らない私でも面白く読めたので、きっと京都を知っている人や地元の人にはたまらないんだろうなと思う。一言で言うとたぬきの血で血を拭うまでいかないけど、抗争の話。天狗が出てきたり、カエルが出てきたり、昔話のようで、そんな昔ではない、昭和の香りがするファンタジー。ファンタジーであって、たぬきなんだけど人間臭くて、ちょっと現実っぽい、もしかしたら本当に京都の街にはたぬきが人間に化けているんじゃないかと思わせる。キャラクターひとりひとり、一匹一匹が個性豊かで、面白い!難しく考えることなく、素直に読んで、素直に楽しみたい一冊。