なんどひとに騙されようとも、なんど痛い目をみようとも、結局は人間を信用しなければなにもできないではないか。
ダニエル・ブーン・デイヴィス
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『夏への扉』はアメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインのSF小説である。タイムトラベルを取り扱った初期のSF作品で、1956年に発表され、日本においては1958年に加藤喬によって初めて翻訳されたほか複数の出版社によって日本版が出版されている。また2011年には演劇集団キャラメルボックスによって舞台化され、2ヶ月にわたって公演された。 原作発表時の人々にとっては近未来にあたる1970年のロサンゼルスがこの小説の舞台である。そこは人工冬眠が実用化された世界で、未来への片道時間旅行が流行していた。主人公のダンは愛猫ピートと共にこの街に住み、大学で得た機械工学の知識を元に家事用ロボットの開発を行い大成功を収めていた。しかし共に会社を立ち上げた親友マイルズとダンと懇意にあった秘書ベルの裏切りにあい、失意のうちに人工冬眠で30年後の未来へと旅立つことを決める。ダンは冬眠から目覚めたあとも2人への恨みを忘れず、自らの成功と2人への復讐のため東奔西走する。
「元祖時間SF」の議論は置いておこうこの作品について語られる時、時間旅行SFの原点、とかバックトゥーザフューチャーの元ネタ?とか、「先駆け」要素の話が多いので、本レビューではそこには触れない。本作はカスタム機械設計者、メカトロ設計者、比較的新しい言葉で言えばIOT技術者にこそ読んでほしい、という点を強調したい。本レビューサイトは読んだ人向けのサイトという前提なので、読んだ人の中にもし技術者がいたらそこに着目してほしい。もし工業系の学校出身の読者がおられたら、ご自身の母校やゼミにこの作品を寄贈してほしい。私自身20年以上、カスタム機械の設計をしてきた経験があり、「発明」とは言わないまでも毎日「開発」を行ってきた。そういう人間にこそうなづけるシーンがこの作品にはてんこ盛りにあるのだ。本作品はSF的展開の痛快さが前面に出ているが、技術者ならその「技術魂あるある」を掘り下げて、3倍楽しむ事がで...この感想を読む
タイムリープ、タイムスリップ、タイムマシーンと使っていろんな事件を解決していくというお話は、今や定番のものとなっています。特に日本人はこの題材を好みます。古くは「時をかける少女」最近では「涼宮ハルヒ」などのアニメ作品にも多数登場します。その面白い作品構成の元祖となっているのがこのハインラインの夏への扉なのです。ハリウッド的な素晴らしいプロットに、ハードSFらしい緻密な世界設定と論理的な考察力。いろんな辛い事件を越えて最後は主人公がコールドスリープして、胸のすくようなハッピーエンドを向かえます。SF的な要素を抜いても面白い物語として読めます。緻密な物語性が日本人には受けるのかもしれません。海外ではハインラインの代表作とは呼ばれていないみたいです。
新訳版のほうを読んだ方が良かったかもしれない、と思った。古い海外の翻訳モノにありがちな、とっつきにくい分かりにくい文章のように感じられた。例えば、闇夜に鉄砲なんかが普通の日常会話中に使われていて、さすがにそれは……と思わず苦笑してしまったり。損していると思う。構成は素晴らしかった!コールドスリープによる時間跳躍のうえに、タイムマシンによる時間旅行はすごい。まさかそう来るとは。ちゃんと帰って来られるか分からない過去への時間旅行に挑戦する主人公の度胸が魅力的。主人公の性格描写はかなり細やかだったように思う。それと猫の描写!これは猫好きじゃないと書けない小説。
ダニエル・ブーン・デイヴィス
恋人や親友に裏切られた経験のある主人公が、再び幸せになるために、新しく出来た友人に自分の会社の経営を任せる選択をするシーン。