麻布暗闇坂殺人事件のあらすじ・作品解説
麻布暗闇坂殺人事件は、風野真知雄原作の時代小説である。この作品は、耳袋秘帖シリーズの中の1つにあたる作品。この時代小説は、初め大和書房よりだいわ文庫にて刊行されたが、後に文藝春秋より文春文庫にて殺人事件シリーズとして加筆新装丁で再刊行された。この耳袋秘帖は殺人事件シリーズの他に妖談シリーズもある。 この作品は、坂の町・麻布の暗闇坂界隈で起こった幽霊騒動などの怪事件を、赤鬼奉行こと根岸肥前が謎を解き解決していく物語である。シリーズの主人公は肩の彫り物から赤鬼奉行と称され、耳袋という町の奇譚を集めた随筆を書いている南町奉行の根岸肥前守鎮衛。この根岸が書く耳袋は読み物として非常に人気があり読まれているが、公に出来ない事件を記した門外不出の耳袋秘帖という随筆もある。根岸の家臣たちは、元臨時廻り同心で後に根岸直属として働くことになった栗田次郎左衛門、根岸家の家臣で剣の達人坂巻弥三郎など。他にも根岸の恋人の芸者力丸や、根岸の亡くなった妻のおたかが時折幽霊になって現れて事件の解決を助けることもある。
麻布暗闇坂殺人事件の評価
麻布暗闇坂殺人事件の感想
麻布七不思議
耳袋秘帖シリーズ。今は麻布といえばお洒落な街。そこで繰り広げられる幽霊が絡んだ不思議な事件。今回は霊媒のような女の子が出てきます。これは現実にもあることらしいので(信じる信じないは個人差がありますが・・・)抵抗なく読めましたがやはり根岸肥前の奥様の幽霊はいつもなんだか妙なきがします。せっかく素晴らしい洞察力と観察力、人情味あふれる話なのですが、本物の幽霊が出てくると一気に「フィクションです」と宣言されてしまった気がします。そして大切な奥さんの幽霊がいるのに、恋人の芸者に惚れている肥前が嫌になってしまいます。奥さんが可哀想!
なぜか身近な江戸時代
奇談集「耳袋」とそれを記した赤鬼奉行こと根岸肥前を中心とした謎解き時代小説です。奇談とか怪奇とかいったものが苦手な人でも十分楽しめます。むしろそういった人のほうが読後感に満足を得られるかもしれないです。暗闇坂という昼でも薄暗い場所が舞台です。坂が多い町であるがゆえに生まれる怪しげな話が人の口にのぼるところへ事件が起こります。ここで立ち回るのが根岸肥前とその配下の者たちですが、彼らは彼らで、のんきなようでもあるし、駆けずりまわることもあります。実に人間くさいです。決して人間離れしているわけではありません。人とは奇怪な出来事を生み出してしまう。「見るたびに花の色が違う椿」など彼らもまたそうした人が生み出してしまう奇怪な出来事に振り回されますが、そこの含まれる人の思いに正面から向き合うことで解決していきます。本作はシリーズものですが単独でも十分楽しめます。そして、現代の人々にとっては当然のこ...この感想を読む