空飛ぶ広報室の感想一覧
有川 浩による小説「空飛ぶ広報室」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
自衛隊のことを少しでも理解したい人へ。
狭き門をくぐり抜け、憧れの航空自衛隊のパイロットになった空井。だけど不慮の事故でパイロットの資格を失ってしまう。そんな彼に与えられた仕事は広報という仕事だった。自衛隊自体のことは自衛隊マニアの有川さんの作品で少しわかった気がしてましたがこれは、さらに広報室というところを題材にしているのが面白い。普段、まったく見えない裏方の仕事。だけど、彼らも立派な自衛隊の1員として民間の人に自衛隊を理解してもらうため、有事には必要な存在だとわかってもらうため、努力しているというのを感じました。最初はくさっていた空井も、そのことに気づき自分の仕事とは何かを見つけていく作品。お仕事小説としても自衛隊を理解する手助けをする作品としても一押しです。
フェアかつピュアに楽しみたい
最近まで放映されていたドラマの原作。主人公は不慮の事故でパイロットの免許を剥奪された青年・空井。異動した先は癖のある先輩達ばかりの、航空自衛隊航空幕僚監部広報室。一方、TV局で報道局記者として働いていたが、情報局に異動してディレクターになった稲葉。有川作品の中では少し恋愛要素が控えめで、夢を断たれてしまった二人の成長物語として読む方が良いかと思う。しかしながら、丹念に取材されており、全く知識がなくても想像出来るほどによく「中」が描かれている。自衛隊について、様々な意見はあるだろうが、そういうのは一旦脇に置いて、フェアに、ピュアな気持ちで読んでもらいたい。また、作者が発行を遅らせてでも書きたかった「あの日の松島」。3・11、何が起きたのかを現地にいた隊員の目線で知り、とても心苦しくなった。「有事」とはかくも悲惨なものなのか。しかし、比較的軽めの作品でありながら、ここまで思わせてくれるあたり、本...この感想を読む
道は一つきりではない、ということ。
主人公の挫折から、この物語は始まります。どうしても憧れに憧れていて、超超超狭き門で、でも手が届いて。なのに不運は突然、理不尽にやってくる。脱力感とか虚無感とか、そういったものを主人公から受け取ってから読み進めることになりました。そういうのも込みで、読書の魅力です。思ってもみなかった仕事に、それでも邁進できる力を持てるってすごいな。でも自分ひとりでそこまで行けるかといえば、どこかで限界はあるんですよね。同僚や上司、仕事で出会う他業種の人。仕事のスキルや心の持ち様や、またそういった具体的なことではなくても、何かしら分けて貰えるのが「人と働く」っていうことなのだと、そんなシンプルなことを思い出させて貰いました。主人公の空井君も、影響を与えたり与えられたりの日々で、空自の広報官の仕事を充実させていきます。自分ならどうかな。凹みそうなら、この本を読み返そうと思います。この感想を読む
自衛隊について興味がない人こそ読んで欲しい
この物語は、ふだん、まったくなじみのない航空自衛隊の広報室のメンバーが主役。とても自衛隊とは思えない話が多々あります。それは「自衛隊員だって生身の人間」だから当たり前なのですが、なかなかその当たり前がわからない。自衛隊=言い方を変えただけの軍組織としか頭になく。今まで自衛隊に対してなんの興味もなかった。自分自身の頭の中でただ自然災害の時に助けてくれる集団ぐらいにしか認識していなかった。でもこの物語を読んだことで少なからず何かが変わったような気がします。自己イメージだけで物事を見てはいけないことを学びました。この著者さんの作品には結構自衛隊ものがあるらしいので、今度ほかの作品も読んでみたいと思った。