あるキングの評価
あるキングについての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
あるキングの感想
妙に後を引く不思議な小説
異色の伊坂幸太郎作品「あるキング」の作者である伊坂幸太郎の代表作として名が挙がるものいえば、映画化もされた「グラスホッパー」やその続編の「マリアビートル」、「陽気なギャング」シリーズなどだろう。彼の作品は殺し屋やギャングなど特殊な職業についている登場人物たちの冒険譚が臨場感たっぷりに描かれ、いつの間にか読者を非日常へ攫っていく、という形態が多い。今回も無意識にそのような、端的にいえばハラハラドキドキのアクションとそれを支える複雑な人間ドラマを期待して読んだわけだが、正直読み終わった直後の気持ちは「拍子抜け」というのが一番近い。主人公の王求は天才野球少年であり、教育熱心な両親に育てられ、最強の野球選手になるも天才ゆえの孤独から逃げられず、最後は死んでしまう。この一冊をまとめるとこんな感じで片付けられてしまうのだが、このストーリーが伊坂らしからぬ淡々とした感情を押し殺したような文章で綴られ...この感想を読む