容貌という遺伝の骨頂
この作品は、桜庭さんの「少女七竃と七人の可哀想な男たち」と相通ずるものがある。
「容貌における美」を一つのテーマとする。
妖艶で魅惑的な美。七竃の方はそのかんばせの美しさと淡白で無関心な内面とを対比させて物語を展開させているように感じたが、この作品では端的に美と醜悪を対比させているのである。
美しく生まれたものは決まって、ある時から身動きが取れないほど太り、目も当てられない容貌となる。
その意味するものとは諸行無常、また天は二物を与えず、といったところだろうか。
ジャングリンよりもジャングリン・パパを求めた主人公からも、容貌の美しさを単なる長所の一つとして描いていないことが見て取れる。
また、バターの溶けたような黄色い目、という表現は醜悪を率直に表している。しかしその目が表すのは醜悪だけではないと思われる。美しい容貌と同じくその目も決まって遺伝されていくものとして描かれており、それはまさに逃れられない先天的な呪縛とも言える。
このように、作者は容貌という一つのテーマに乗せて、親から子へと受け継がれるものという、子にとって選択不可能な概念を見事に描いているのである。
しかし、作中の登場人物の中に、親を見て自分もこのような醜い姿になるのだ、と嘆く者は1人も居ない。それぞれに宿命を淡々と受け、喜ぶでもなく嘆くでもなくその遺伝というループを日常の中に溶け込ませている。そこにこの作品の魅力を感じた。
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