トリガーのあらすじ・作品解説
『トリガー』はお笑いコンビ「インパルス」の板倉俊之が初めて手がけた小説である。2009年7月にリトルモアより発売されたこのハードボイルド小説は、2011年から2013年2月まで実業之日本社発行の雑誌「漫画サンデー」に連載された。漫画の単行本もマンサンコミックスより発売されている。 2028年、国会議員たちに愛想を尽かした国民は、新たに国王制を導入する。初代国王となった坂本は、その強大な権力と私欲で国を荒廃させてしまうが、軍人の冴木が反乱軍を結成し、坂本を処刑し自らが2代目国王となる。冴木は日本から犯罪を無くすべく「射殺許可法」を制定し、悪人を即刻死刑にできる人間を各都道府県に1名ずつ配置する。その人間の任期は1年で、志願者の中から脳波を測定し、国王が最終的に決定する。こうして選ばれた彼らのさまざまな活躍や顛末が描かれる。 自由に銃を使えるようになった彼らの中には、権力に溺れる者も、またなかなか銃を撃てずに悩む者もおり、銃や平和についても考えさせられる作品である。
トリガーの評価
トリガーの感想
クラークにしては変わった題材
誰もが戦争のない世界、人殺しが起きない世界というものを望んでいるし、そういう世界を夢想したことがあると思います。クラークがハードSFらしい想像力でそれを真剣に考え考察した物語がこの作品です。火薬を遠隔で発火させたり、無効化するフィールドができたら、というアイデアはそこまで斬新なものというわけではありませんが、さすがクラークという科学的精緻さと論理性がすばらしく、そしてそういう技術ができた時の人間、政治の反応というところにもう一つの主眼が置かれています。上巻では主にトリガー粒子の発見から研究におけるドラマが描かれています。アメリカ的な雰囲気なので読みやすいと思います。