晴天の迷いクジラのあらすじ・作品解説
晴天の迷いクジラは窪美澄による長編小説で、新潮社の小説新潮別冊「yom yom」のvol.22、23に収められた「ソラナックスルボックス」「表現型の可塑性」、書き下ろし作品である「ソーダアイスの夏休み」「迷いクジラのいる夕景」の4作品が絡み合いながらストーリー展開していく物語である。 2014年7月に新潮社より単行本が刊行されている。 勤務していたデザイン会社の倒産の危機と失恋に傷付く24歳の田宮由人と、お金持ちの男性と結婚したものの、子供を置いて家出をし、その後立ち上げた会社の倒産の危機に直面している、由人の会社の社長で48歳の中島野乃花、初めての子を亡くしたことで過保護に干渉をする母に重さを感じる中、友人の死のショックから家出をしてしまった女子高生正子の、それぞれの環境と生きる苦しみが描かれている。ラストでは、死を決意した由人と野乃花、途中で出会った正子が、座礁したクジラをの姿を見て人生を見つめ直す様子が描かれている。 2012年には山田風太郎賞を受賞するなど高い評価を受けている作品である。
晴天の迷いクジラの評価
晴天の迷いクジラの感想
かなり重いテーマです
健全な人にはダークかな?タイトルだけではストーリーがまったく想像できていなくて、まぁ適当に借りた本だったんですが、けっこう重いストーリーだったかなと思います。ちなみに私は比較的神経質な性格であり、よくうつっぽくなるし現在も睡眠導入剤を飲まないと眠れないとか完治しないちょっとした病気を持っていたりして体調悪い日も多く、登場人物たちに気持ち的にはちょっとリンクしました。リンクしたけど、この本の3人の人生は私がわかるとか言ったら失礼なほど過酷で波乱万丈な人生で「私のほうがまだまし」と思える本でした。もしかしたらそういう風に思わせるために書いた本なのでしょうか。過保護って怖いね最後に登場する正子って女の子は5歳くらいから現在までの成長を密に書かれていて、姉が病気で亡くなったことから母親の異常な過干渉が始まって正子が病んでいくってことだけど、うちも子供が1人しかいないのでこうやって干渉し続けると子...この感想を読む
いい本に出会いました。
短編が4作、収められていて最後の章で登場人物が合流して内湾に迷いこんでしまったクジラを見に行くというストーリーです。それぞれに自分の人生に光が見えなくなって死を意識する3人の登場人物。読んでいて苦しくなるほど、リアルに伝わってきました。「親にこんな事情があるから理解しろなんて子どもには無理です。子どもは優しくされたくて生まれてくるんじゃないですか・・」正子の言葉が心に響きました。3人の現状はなにも解決はしていないけれど、ラストの「だけど僕は死なない。たぶん」一日ずつ繋いで頑張っていくというささやかな希望が読後感をよくしてくれました。わが子が「生きていてくれればいい」原点の当たり前の気持ち。大事にしたいと思います。