戦慄的な、衝撃的な、ほとんど完璧な芸術作品 「叫びとささやき」
イングマール・ベルイマン監督の「叫びとささやき」は、戦慄的な、衝撃的な、ほとんど完璧といっていい、芸術的な作品だと思います。19世紀末、スウェーデンの田舎の邸宅で、癌を病み、死期迫る中年の次女(ハリエット・アンデルセン)と、それを見舞う冷淡な長女(イングリッド・チューリン)と多情な三女(リヴ・ウルマン)と、素朴な召使い(カリ・シルヴァン)。この四人の女たちに、イングマール・ベルイマン監督は、まさに"女"の深奥を凝視し、抉り出すのです。激痛に苦しみぬく次女の姿は、あまりのすさまじさで、正視に耐えません。そのうめきや絶叫は、死への恐怖だろうか、生への執着だろうか。冷たい表情をくずさぬ長女は、二十歳も年上の外交官の夫と、五人の子供までもうけながら、性の悦びを知らず、知らないからこそ夫を憎み、自分が女であることを嫌悪するかのように、我と我が深部にガラスの破片を突き刺すのです。そして、三女は医師と情事を持っ...この感想を読む
5.05.0