生きていくことの意味を見出せないまま、月日が流れている不安の中で自分を持てあましている青年の心の揺れを鮮烈に描いた 「八月の濡れた砂」
夏の湘南海岸。高校を退学した健一郎(村野武範)と清(広瀬昌助)は、不良学生に暴行された少女・早苗(テレサ野田)を救ったことから、その姉の真紀(藤田みどり)と知り合う。健一郎は、母に求婚している亀井(渡辺文雄)のヨットに、真紀と早苗を誘い、清と二人で襲おうとする。流れる汗。やがて銃声が鳴り響くのだった-------。石川セリのアンニュイに満ちた、けだるい歌とともに、いつまでも心に残って忘れられない映画、藤田敏八監督の「八月の濡れた砂」。この映画は、広がる青い空、目に痛いほどのまぶしさでギラギラするような陽光をはねかえす海。砂の灼熱感。あるいは、人の気配のない砂浜の風のそよぎ。打ち寄せる白い波。海辺のさまざまな表情が、きらきらとした映像で鮮烈に表現されていますが、この海の描写は、すなわち登場人物たちが抱いている焦りや、いらだちや、不安や心細さや、やりきれなさの心象風景となっているのです。人生の戸口に立って、...この感想を読む
4.04.0
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