重々しいながらも読み応えのあるエッセイ
「昭和を生きてきた」ということこのエッセイ集はタイトル通り、昭和9年生まれの山田太一が生き抜いてきた時代を振り返って思うことが書かれている。かといって説教臭いとか、いわゆる“昔は良かった”的なことではなく、自分に起こった出来事、感じたこと、自分を形成したと思われる大きな記憶などが、山田太一らしい淡々とした実直な文章で描かれている。山田太一を脚本家ではなく小説家として知ったのは、奥田英朗のエッセイからだ。時々出てくる山田太一の名前が気になって読んでみたのが始まりだった。結果、緻密に書かれた表現やリアルな心理描写が好みで、時々読んでいる作家だ。だけどエッセイを読んだことはなかった。この本もタイトルに惹かれて手に取っただけで、エッセイとは思わなかった。大体エッセイというものは比較的軽めに読めるジャンルだと思う。だけどこの本は、深く考えさせられることも多く、エッセイとはいえかなり読み応えのある...この感想を読む
3.53.5
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