事件の背景に思いをはせる
インタビュアとしての資質1995年3月20日に起きた地下鉄サリン事件。オウム真理教の信者、と元信者8人に村上春樹自身がインタビューした内容をもとに構成されています。まず読後思うのは、インタビューをする村上春樹のこの姿勢があったからこそ、彼らの内面を言葉として引き出し、この事件の裏側にある不可解な背景を紐解くための機会を作り出せたのではないか、ということです。事件に対してただ善悪を判断するような単純な目線ではなく、彼らに何か教え諭すわけでもない、ただあなたのことをもっと知りたいんだけど、という日常の人間関係によく見られる会話の延長のような、自然さを失わないインタビューの前で、どのように教団に出会い、どのような気持ちでのめり込み、または途中でやめることになったのか、など彼らは少しずつ語り始めます。彼らが起こしたあまりにも残酷で、大きなショックを受けた事件を思えば、それに関わった人間はぜひ特...この感想を読む
5.05.0
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