ミステリでもヒューマンドラマでもない、人殺しとの話 - 彼女について知ることのすべての感想

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彼女について知ることのすべて

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演出
4.50
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ミステリでもヒューマンドラマでもない、人殺しとの話

4.04.0
文章力
4.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.5

「その夜わたしは人を殺しに車を走らせていた。」という書きだして始まる物語は、しかしミステリでもサスペンスでもない。 小学校の教員である「わたし」が、ひとつの出会いをきっかけに巻き込まれていった人間関係の「なりゆき」を、時間を行ったり来たりしながら読者は見守る、そういう構造の小説だ。 佐藤正午作品にしばしばあらわれる「巻き込まれ・なげやり」型の主人公が、この話のなかでも存分になげやりに生きている。悪人に徹することもできず、そもそも殺人の計画など計画倒れではないか、と汗びっしょりになるような主人公。 そして、やはりしばしばあらわれる、しれっとした美しい悪女が話の鍵を握る。 いわゆる普通の「起承転結」をのぞむ人にとっては、このうえなく読みづらく、すっきりしない話であろうかと思われるが、ハードボイルドとミステリのかけあわせのようなこの作品に、それではどんなカテゴリを用意すればよいのだろうか? 緻密な構成と圧倒的なリーダビリティ、時間の往還を愉しむ覚悟のある人は、どうぞ、ページをめくってみてください。

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