彼女について知ることのすべての評価
彼女について知ることのすべてについての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
彼女について知ることのすべての感想
ミステリでもヒューマンドラマでもない、人殺しとの話
「その夜わたしは人を殺しに車を走らせていた。」という書きだして始まる物語は、しかしミステリでもサスペンスでもない。小学校の教員である「わたし」が、ひとつの出会いをきっかけに巻き込まれていった人間関係の「なりゆき」を、時間を行ったり来たりしながら読者は見守る、そういう構造の小説だ。佐藤正午作品にしばしばあらわれる「巻き込まれ・なげやり」型の主人公が、この話のなかでも存分になげやりに生きている。悪人に徹することもできず、そもそも殺人の計画など計画倒れではないか、と汗びっしょりになるような主人公。そして、やはりしばしばあらわれる、しれっとした美しい悪女が話の鍵を握る。いわゆる普通の「起承転結」をのぞむ人にとっては、このうえなく読みづらく、すっきりしない話であろうかと思われるが、ハードボイルドとミステリのかけあわせのようなこの作品に、それではどんなカテゴリを用意すればよいのだろうか?緻密な構成...この感想を読む