英国執事が語るストーリー - 日の名残りの感想

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日の名残り

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英国執事が語るストーリー

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これは日系のイギリス人著者による伝統的な英国貴族とその執事にまつわる話です。 「完璧な執事はイギリスにしか存在しない」という言葉が欧州にはあるそうですが、その執事の視点から英国貴族とその家庭生活、女中として勤めている同僚の女性とのほのかな恋も絡んで話は展開します。背景として第二次大戦へと向かう当時の世相が暗い影を落としています。 日本人からは珍しい当時のイギリス人貴族のあり方やイギリス衰退の歴史をなぞるかのような物語の展開、主人公の執事のただ忠実に職務を実行する中で、同僚女性とのかかわり合いなどから僅かに漏れてくる本当の姿。 全体的に派手な暴力シーンやペクタクルが出てくるわけでもありません。筆致は抑制されていて落ち着いた語り口です。それにも関わらず引き込まれてしまう魅力をもっています。 訳文も端正で渋みを感じさせる良質の文学作品で、イギリスでは権威あるブッカー賞を受賞し映画化もされました。 イギリス小説を結構読まれている方なら、はずせない作品だと思います。

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大英帝国の黄昏カズオ・イシグロの長編小説『日の名残り』は、イングランド南部を舞台に、第2次世界大戦後からスエズ動乱までの期間を、貴族の屋敷に執事として務める主人公スティーブンスの語りで描いた物語である。すなわち100年以上世界一に君臨したイギリスが、その座をアメリカとソ連という新たな超大国に明け渡した時期、大英帝国の黄昏時を、帝国の象徴たる貴族に仕えた執事の視点で描いた、大英帝国の衰亡史とも言える内容である。故にこの小説を本当の意味で楽しむには、イギリスの歴史の知識が必要であろう。イギリスは、18世紀末から19世紀の産業革命期を経て、多くの海外植民地を獲得し、ヴィクトリア女王の治世(1837〜1901年)において、政治・経済共に世界一の国として繁栄した。帝国の威光を国民は享受し、貴族、中産、労働者の3大階級が生まれるなど、現代にもつながるイギリスの根幹が出来上がった。しかしながら2つの大戦を経て、帝国の威...この感想を読む

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