英国執事が語るストーリー
これは日系のイギリス人著者による伝統的な英国貴族とその執事にまつわる話です。 「完璧な執事はイギリスにしか存在しない」という言葉が欧州にはあるそうですが、その執事の視点から英国貴族とその家庭生活、女中として勤めている同僚の女性とのほのかな恋も絡んで話は展開します。背景として第二次大戦へと向かう当時の世相が暗い影を落としています。 日本人からは珍しい当時のイギリス人貴族のあり方やイギリス衰退の歴史をなぞるかのような物語の展開、主人公の執事のただ忠実に職務を実行する中で、同僚女性とのかかわり合いなどから僅かに漏れてくる本当の姿。 全体的に派手な暴力シーンやペクタクルが出てくるわけでもありません。筆致は抑制されていて落ち着いた語り口です。それにも関わらず引き込まれてしまう魅力をもっています。 訳文も端正で渋みを感じさせる良質の文学作品で、イギリスでは権威あるブッカー賞を受賞し映画化もされました。 イギリス小説を結構読まれている方なら、はずせない作品だと思います。
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