私たち、気が合うんじゃないだろうかと思わせてくれる日記
会いたくて会いたくて震えるほどではないけれど
毎年、お正月の賑やかさが一段落した頃にTBS系で放送される「さんま、玉緒のあんたの夢をかなえたろか」という番組をご存じだろうか。街頭で一般人に夢を聞く。幼稚園児の男の子が「昆虫博士になりたい」だとか「女子高生がイケメンアイドルに会いたい」だとか「お菓子をお腹いっぱい食べたい」なんてのもあっただろうか。そんなインタビューの中から数人が選ばれて、夢を叶えてもらえるのである。私は、その番組を見ながらいつも誰に会わせてもらいたいのか、自分の夢は何なのかを熟考する。その結果、「三浦しをんの火宅訪問をしたい」という結論に達した年がある。(毎年、そうは思わないのかが弱いところではあるが、そこは勘弁していただきたい)特に、面白いエッセイが出版された年は三浦しをん熱が盛り上がる。できれば、彼女の親友のあんちゃんさんも一緒にお目にかかって、一晩中おしゃべりしていたい。コミックの話、小説の話、私もオダギリジョーが好きなので、気が合うのではないだろうかと勝手に思っている。でも、この夢が叶ったとして私以外の視聴者は全く面白くもないよね。しをんさんも迷惑だろうし。
三浦しをんのデビュー作『格闘する者に○』を読んだ時からのファンだ。感性のベクトルがいろんな方向に向かっている。物語の流れから置いて行かれそうになるのを、後追いしながら読む。すごく幅のある作家さん。このエッセイの中でもその振り幅を見せてくれる。『フェルマーの定理』からBLまで。退屈しない。エッセイっていうのは大抵が自己満足だと思っている。特にこのエッセイは「日記」である。他人の日常に人は関心を持たないのが普通だ。よっぽど、面白い日常でなければ。この『ビロウな話で恐縮です日記』も特に驚くような日常が書いてあるわけではない。惹かれるのは、その語り口なのだと思う。自虐的で、多分、少しは脚色も入っているのではないか。だって、そんな奇妙なタクシーのドライバーにそうそう当たる訳がない。世の中のタクシーの運転手さんは多分もっと常識的だろう。私は、エッセイでの誇張を許す派だ。多少の誇張がなければ、読み物としてつまらない。小学生の日記じゃあるまいし、書いているのはプロなのだから。
夢の話は少し控えめで
ただ、この「日記」の中にしをんさんが見た夢の話がちょいちょい挟まれている。それはちょっとどうなのかと。昔、職場の休憩時間に「私が昨日見た夢」をこと細かく教えてくれる同僚がいた。あくびをこらえるのに大変だったさ。オチも何もない人の話をなぜ延々と聞かなくてはならないのか。それは、ちょっとした拷問に近い。せめて、オチくらい創作してみろと言いたかった。
いくらしをんさんでも、昨日見た夢の話は要らないな。読んだ後の感想は「…で、何なの?」以外あり得ないでしょう。きっと、しおんさんは見た夢を理路整然と読者に伝えようとしてくれているのだろうが、何の意味があるのだろうか。夢の話、少し多すぎたな。でも、一部「あーなるほど」と思ったことがあった。それはしをんさんのママさんが夢の中でトイレに行きたいと言い出す回のことなんだけど、夢の中でトイレを探している時って、大体自分も尿意を感じていると思うんだけど違う?少なくとも私はそういう傾向にあるなあと思ったよ。
それと、昔の職場の同僚もそうなんだけれども、夢を覚えているのがすごいな。夢って大抵、支離滅裂で起承転結がきちんとしていなくない?途中で記憶がぶつ切れになったり、何か誰かが出てきたような気がする程度の印象なんだけど、ストーリーとして把握出来ているのは小説家の才能なのかしら。その夢が次の小説のヒントになったりするのかな。
ハゲについて考えた
しをんさんが「もし、自分の旦那がはげたらそれは裏切られた気持ちにならないか」と語っている章がある。あ、これは日記だから章じゃなくって日だわね。私もその事に関して、深く深く考えてみた。なぜならば、自分の夫が今、まさにその危機にぶち当たっているからだ。本人は、気にしてリ○ップなる増毛剤?毛髪剤?に頼っているのだが、それは結構高価なのである。そんなにハゲるのいやなの?男の人って。外国人はあんまり気にしないっていうよね。
この件に関しても、私はしをんさんと同じ意見なんだよね。彼女のいう「むき出しの頭皮」は許容できないんだけれども、それは年齢とともにいつか受け容れることができると思うの。なで回すことは、夫のプライドもあるのでできないけれども、「愛する人が生きてそばにいてくれたらハゲなんて些細な問題である」…このくだりも、私と全く考え方が一緒だわ。老いていくのはお互い様。やっぱり私たち絶対に気が合うんだと思う。できることなら、男女の仲に造詣が深いしをんさんのおばあさまも一緒に語りたいわ。「あんたの夢をかなえたろか」のインタビュー、どうぞ私のところにも来てください。
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