サイコパスがテーマ - 黒い家の感想

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黒い家

4.504.50
映像
4.00
脚本
4.75
キャスト
4.25
音楽
4.00
演出
4.00
感想数
2
観た人
2

サイコパスがテーマ

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

「黒い家」はこんな作品!

この作品は、サイコパスという日常に潜む殺人者をテーマにした、ホラー映画です。

保険会社に勤めるハルは、担当する菰田夫婦を調べるうちに、二人が連続殺人を行っている事実をつきとめます。

しかし、一方で身の回りに報復とも取れるような、不審な事が次々と起こり始めます。

幸子や菰田の過去が、徐々に明らかになっていく過程は、なんとも言えない気持ち悪さがありました。

また、終盤の、菰田家でハルが恋人を探しているシーンは、お化け屋敷のような怖さがあります。途中で幸子が帰宅する所は本当に怖いです。



ラストシーンの解釈!

ラストシーンは、幸子を殺害した後、ハルもまた殺人の快楽に目覚めてしまう、という結末のように解釈しました。

そもそもハルって、サイコパスの素養はあったのでしょうか。

ハルはなよなよしていて、気弱なイメージがあります。
しかし、一方で筋トレマニアでもあり、人に見せている態度と、自己イメージは違うのかな、と思いました。

また、怖い顧客の対応すら嫌がるのに、なぜか連続殺人の匂いを嗅ぎ付けると、自ら「調べてみたい」と言い出します。

また、プールでは人の迷惑などお構いなしに、飛沫を立てて泳いでいるのも、サイコパス的な感じがします。

結局ハルもまた、サイコパス的な素養が最初からあったのでしょう。

一見普通に見える人もまた、殺人者の予備軍であるという怖さが、この作品の恐ろしい所だったと思います。


大竹しのぶさん、西村雅彦さんの怪演!


二人とも、もう普通に世の中にいる、おかしな挙動の人そのもの、という感じがしました。

特に西村雅彦さんは、古畑任三郎シリーズのコミカルなキャラクター、今泉くんのイメージがあるので、すごく役柄にギャップを感じました。

今考えれば、菰田は小学生の時からずっと幸子の奴隷だったんでしょうね…。

最初の息子の名前を連呼しているシーンは、今考えれば、すごく演技くさく見えます。
菰田が実行犯ではないですからね…。

もしかしたら、菰田が挙動不審なのは、幸子と関わったことで、頭がおかしくなったのかもしれません。

そういった挙動も含めて、菰田のおかしさとか、脅されている感じがよく出ていました。


また、殺人を繰り返していた幸子を演じた大竹しのぶさんも、大変鬼気迫る演技で目が離せませんでした。

もう目がバキバキに開いちゃって、本当に怖い人ですよね。歩き方とかも、怒っているみたいにズンズンズンと。

実際にそういう人はいますが、よく観察しているなと思います。

普通にハルの家に入っていくシーンが、すごく怖かったです。
本当に、普通に入ってきちゃう。

幸子はものすごい完璧主義者というか、間違いを異常に嫌いますよね。

ストライクを出せないと思ったら、転がるボーリング玉を追いかけて行くし、少しの聞き間違えも認めない。

恐らくハルを襲ったのも、本当は自分の犯行なのに、ハルが菰田の仕業だと勘違いしたからなのでしょう。

そういった異常性が、よく出ていて怖かったです。


サイコパスの解釈!


映画の中では、菰田の妻、幸子がサイコパスという解釈でしたが、現代に蔓延しているサイコパスのイメージとは、少し違うように感じました。

現在一般的となっている、サイコパスの生態は、日常生活を普通に送っているのに、何食わぬ顔で殺人を行っている、というものです。

幸子は話し方も少しおかしいですし、定職にもついていないので、その辺りの解釈が少し乖離しているかもしれませんね。

どちらかというと、同じく貴志祐介さん原作の「悪の教典」の殺人鬼、蓮見の方が一般的なサイコパス像に近いのかもしれません。

蓮見と幸子の違いは、まず生い立ちの部分です。
幸子は、幼少期に親に保険金目当てで殺されそうになるという、辛い過去がありました。

常にその過去を引きずっているような節があり、殺人の動機にもなっているようです。

しかし、蓮見にはそういった過去は無く、あくまで淡々と生徒を葬っていました。

また、蓮見にとっては殺人はゲームに近いものなので、バレそうになると手を引いてしまいます。そうした知能の高さが際立つのです。

しかし、幸子はどちらかというと、場当たり的な犯行や、感情的になっての犯行が多く、バレないようには工作しますが、衝動を抑制できない性格のように見えました。

また、殺人に性的な興奮(征服する興奮)があることも、幸子と蓮見の違いだと思います。

蓮見はセックスを殺人とは全く切り離して考えていました。(征服する喜びはあったでしょうが…)
しかし、幸子やハルは、殺人の時にこそ性的な快感を感じるような描写となっていました。

最後にハルが幸子を殺害した時に、股間に手をやっていますが、あれ勃起していますよね。
ずっとEDだったのに…。

幸子も家にアダルトグッズが沢山ありましたが、菰田とはそういう関係ではないし(ダッチワイフもあったので)、日常的には性的な興奮がない、という描写なのかな、と思いました。



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心がない、人ではない。

この夫婦、どこかおかしい石川県は金沢市。昭和生命北陸支社に勤務する若槻慎二(内野聖陽)は気弱で真面目な男。日々保険金の請求書類に奮闘していたある日、若槻の元にある女性から「自殺でも保険金は出るのか」という相談の電話がかかってくる。その女性が自殺しようとしていると思った若槻は思い止まるように説得、すると女性は若槻の名前を聞くと電話を切ってしまう。その翌日菰田重徳(西村雅彦)と名乗る契約者から若槻へクレームが入り込む、謝罪に向かった若槻はそこで子どもの首つり自殺の第一発見者となってしまう。その日以来菰田とその妻・幸子(大竹しのぶ)から毎日のように「いつになったら子どもの保険金が出るのか」と異常なほど執拗に請求が来ることに、不審に思った若槻が自ら単独で調べていくうちに少しずつ悪夢へと引き摺り込まれていく…。この映画は1999年に貴志祐介氏のホラー小説を映画化した作品。第4回日本ホラー小説大賞受賞作...この感想を読む

4.04.0
  • 雅
  • 357view
  • 2023文字
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