サイコパスがテーマ
「黒い家」はこんな作品!
この作品は、サイコパスという日常に潜む殺人者をテーマにした、ホラー映画です。
保険会社に勤めるハルは、担当する菰田夫婦を調べるうちに、二人が連続殺人を行っている事実をつきとめます。
しかし、一方で身の回りに報復とも取れるような、不審な事が次々と起こり始めます。
幸子や菰田の過去が、徐々に明らかになっていく過程は、なんとも言えない気持ち悪さがありました。
また、終盤の、菰田家でハルが恋人を探しているシーンは、お化け屋敷のような怖さがあります。途中で幸子が帰宅する所は本当に怖いです。
ラストシーンの解釈!
ラストシーンは、幸子を殺害した後、ハルもまた殺人の快楽に目覚めてしまう、という結末のように解釈しました。
そもそもハルって、サイコパスの素養はあったのでしょうか。
ハルはなよなよしていて、気弱なイメージがあります。
しかし、一方で筋トレマニアでもあり、人に見せている態度と、自己イメージは違うのかな、と思いました。
また、怖い顧客の対応すら嫌がるのに、なぜか連続殺人の匂いを嗅ぎ付けると、自ら「調べてみたい」と言い出します。
また、プールでは人の迷惑などお構いなしに、飛沫を立てて泳いでいるのも、サイコパス的な感じがします。
結局ハルもまた、サイコパス的な素養が最初からあったのでしょう。
一見普通に見える人もまた、殺人者の予備軍であるという怖さが、この作品の恐ろしい所だったと思います。
大竹しのぶさん、西村雅彦さんの怪演!
二人とも、もう普通に世の中にいる、おかしな挙動の人そのもの、という感じがしました。
特に西村雅彦さんは、古畑任三郎シリーズのコミカルなキャラクター、今泉くんのイメージがあるので、すごく役柄にギャップを感じました。
今考えれば、菰田は小学生の時からずっと幸子の奴隷だったんでしょうね…。
最初の息子の名前を連呼しているシーンは、今考えれば、すごく演技くさく見えます。
菰田が実行犯ではないですからね…。
もしかしたら、菰田が挙動不審なのは、幸子と関わったことで、頭がおかしくなったのかもしれません。
そういった挙動も含めて、菰田のおかしさとか、脅されている感じがよく出ていました。
また、殺人を繰り返していた幸子を演じた大竹しのぶさんも、大変鬼気迫る演技で目が離せませんでした。
もう目がバキバキに開いちゃって、本当に怖い人ですよね。歩き方とかも、怒っているみたいにズンズンズンと。
実際にそういう人はいますが、よく観察しているなと思います。
普通にハルの家に入っていくシーンが、すごく怖かったです。
本当に、普通に入ってきちゃう。
幸子はものすごい完璧主義者というか、間違いを異常に嫌いますよね。
ストライクを出せないと思ったら、転がるボーリング玉を追いかけて行くし、少しの聞き間違えも認めない。
恐らくハルを襲ったのも、本当は自分の犯行なのに、ハルが菰田の仕業だと勘違いしたからなのでしょう。
そういった異常性が、よく出ていて怖かったです。
サイコパスの解釈!
映画の中では、菰田の妻、幸子がサイコパスという解釈でしたが、現代に蔓延しているサイコパスのイメージとは、少し違うように感じました。
現在一般的となっている、サイコパスの生態は、日常生活を普通に送っているのに、何食わぬ顔で殺人を行っている、というものです。
幸子は話し方も少しおかしいですし、定職にもついていないので、その辺りの解釈が少し乖離しているかもしれませんね。
どちらかというと、同じく貴志祐介さん原作の「悪の教典」の殺人鬼、蓮見の方が一般的なサイコパス像に近いのかもしれません。
蓮見と幸子の違いは、まず生い立ちの部分です。
幸子は、幼少期に親に保険金目当てで殺されそうになるという、辛い過去がありました。
常にその過去を引きずっているような節があり、殺人の動機にもなっているようです。
しかし、蓮見にはそういった過去は無く、あくまで淡々と生徒を葬っていました。
また、蓮見にとっては殺人はゲームに近いものなので、バレそうになると手を引いてしまいます。そうした知能の高さが際立つのです。
しかし、幸子はどちらかというと、場当たり的な犯行や、感情的になっての犯行が多く、バレないようには工作しますが、衝動を抑制できない性格のように見えました。
また、殺人に性的な興奮(征服する興奮)があることも、幸子と蓮見の違いだと思います。
蓮見はセックスを殺人とは全く切り離して考えていました。(征服する喜びはあったでしょうが…)
しかし、幸子やハルは、殺人の時にこそ性的な快感を感じるような描写となっていました。
最後にハルが幸子を殺害した時に、股間に手をやっていますが、あれ勃起していますよね。
ずっとEDだったのに…。
幸子も家にアダルトグッズが沢山ありましたが、菰田とはそういう関係ではないし(ダッチワイフもあったので)、日常的には性的な興奮がない、という描写なのかな、と思いました。
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