歪み - パレードの感想

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パレード

4.334.33
映像
4.17
脚本
4.17
キャスト
4.50
音楽
4.00
演出
4.17
感想数
3
観た人
6

歪み

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

エンターテインメントとしての映画

『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲さんが監督をされているということで、観たい気持ちになった。

原作は吉田修一さん。吉田修一さんの書籍を拝見したことはない。この作品を観た後、活字でも『パレード』を味わいたくなった。

『パレード』という作名から、イメージしたことはなく、パズルのような広告の不気味な印象に ひきつけられた。

小出恵介さん演じる杉本良介と、貫地谷しほりさん演じる大河内琴美が、作品全体を通して、観ている側を飽きさせない。前半の2人のやりとりが、物語の最後と、ギャップがあり、物語の最後を一層引き立てている。

近所で起こる事件との関係性が、最後の最後で明かされる。事件と、一緒に住んでいる5人がどう関わっているのか。そのことが頭の片隅に残ったままになるため、観ることを途中で止めることはできない。

映画がエンターテインメントであることを改めて感じた。例えばコメディ映画を観た後は、「観てよかった」と言える。しかし、この作品を見た後は、確かに観てよかったと思ったが、それとは、ニュアンスが違う。

ヘリの音と良介と琴美のやりとり

物語は、ヘリの音から始まる。冒頭にヘリの音が大きく聞こえるため、不気味さを感じる。

TVでの近所の事件のニュース。作品の雰囲気を感じ取った。

しかし、そのあとの良介と琴美のやりとりで、緊張が解ける。

違う物語になったかのように、微笑ましい雰囲気が流れ出す。

コンビニの帰り、隣の部屋から 野口良夫が出て来て、2人は急いで部屋の中に入る。

玄関のドアの内側での良介と琴美のリズム感がいいやりとり。観ていて楽しい。

シェアルームでの良介、琴美、未来、直輝

この場面を観て、1人1人の登場人物の役割は、周りとのやりとりの中で生まれるんだなと感じた。特に、良介の役割は観ている側が飽きさせないための刺激になっている。演技は、自然にお芝居をすることが大切だと思っていたが、良介と琴美をみると、画面でのキャラクターの役割をこなす事が大切だなと思った。

貴和子と良介

中村ゆりさん演じる松園貴和子に、魅了された。綺麗な女性で、いたずらっぽく、品がある。

ベットの上でのシーンで、良介の息づかいが中心にきこえるのは、演出だろう。良介の心情をあらわしている。

良介が貴和子に、自分の父の話をする。

『いいお父さんだね』(貴和子)貴和子の言い方が、柔らかくて優しくて心地いい。

『俺、親父に心の中で金沢の公務員の息子は確保しましたって』(良介)リズム感がよく、聴いていてほっこりする。

良介と琴美

物語全体を通して、良介と琴美のやりとりのシーンが、一定の時間の間隔を空けて配置されている。

良介と琴美が、ごはんを食べに行くシーン。やはり、面白い。

この2人のシーンが入ることで、前後の場面とギャップが生まれる。

「はー」と息の音が聞こえて来そう

良介が友達との電話で、後輩が死んだことを伝えられる。その後、琴美と話し、自分の部屋に戻る。その時の表情。力を抜いてベットに倒れこむ様子。このシーンがなんとも言えない。

琴美の、丸山くんが出て行った後の、ベットの上での表情。

この事が何を示しているのか。

ああ、この気持ち分かるなあとなった。

サトルは誰?のシーン

シェアルームで、良介、琴美、未来、直輝の4人はサトルは、一体誰なのかという話になる。

何か盗まれていないか、という事で、良介が500円貯金は無事だった〜と言うシーンは、もちろん面白い。

4人がそんなに慌てていないのが、気になる。

最後の最後のシーン

事件を起こしていたのは、直輝だと明かされる。物語の冒頭から使われている音楽、私には関係ないと俯瞰しているような音楽が使われていて、不気味である。

サトルに犯行現場を見られた直輝。車の中での2人。直輝の息が上がっている。藤原竜也さんの演技がやっと来たかとなった。圧巻である。

サトルに、みんな直輝さんがやってるって事 知ってるんじゃないのと言われる。

「え?」と、観ているこっちも絶句する。本当に、みんなが知っていたかどうかは分からない。そのことが、また恐怖感を生む。

部屋に戻るサトルと直輝。

4人は、旅行の話をしている。直輝が泣き崩れているときの、他の4人の表情。

「直輝も、行くよね?」と未来が言う。

この4人の表情は、なんなんだ。睨んでいるようにも見える。同調しないといけない。圧。

『パレード』

映画化されたものと、書籍は全くの別の作品になる。書籍では、この最後の最後の表情 等をどのように表現しているのかが気になった。

直輝が犯人だと知った時の衝撃が大きい。もう時間的に、犯人が明かされる時だろうと予想はしていたが、まさか、という気持ちである。直輝でなくても、誰が犯人でも、衝撃は大きかったとは思うが。

それくらいに、犯人を明かすまでの、シーンのやりとりが、自然なものだった。ごく普通の人たちという印象だった。

最後の最後の表情を見るまでは。

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日常に潜む「狂気と驚異」

一見淡々とした日常、そこにある作為この作品は、観た後の余韻が永らく残る、「影響力の強い」ものだと言える。ありふれた日常だが、そこに歪みのようなものが外からじわじわと侵食するように入っていく。元々は、直輝、未来、琴美、良介の4人のルームシェアだったところに、男娼のサトルが加わる。この上澄みのハリボテを保とう、つまりはシェアしているぬるま湯に見える「平穏」を保つための手段の選ばなさが面白い。その部屋は「モデルルーム」であるかの如く、平穏と笑いに包まれるべきであるという無言のルールがあり、それを各々住む人は暗黙の了解として受け入れて暮らしている。誰しもが隠しておきたい秘密や感情の吐露(主に弱い部分)が少なからずあるが、それはルームシェアの家では「(例えあっても)無き者として、平穏に過ごす」というルールが常にある。表面的な人間関係をあくまで「保つ」ことこそ、この映画の主旨であり、それを守るための「絶...この感想を読む

4.04.0
  • もあんもあん
  • 78view
  • 1032文字
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