パレードの評価
パレードの感想
歪み
エンターテインメントとしての映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲さんが監督をされているということで、観たい気持ちになった。原作は吉田修一さん。吉田修一さんの書籍を拝見したことはない。この作品を観た後、活字でも『パレード』を味わいたくなった。『パレード』という作名から、イメージしたことはなく、パズルのような広告の不気味な印象に ひきつけられた。小出恵介さん演じる杉本良介と、貫地谷しほりさん演じる大河内琴美が、作品全体を通して、観ている側を飽きさせない。前半の2人のやりとりが、物語の最後と、ギャップがあり、物語の最後を一層引き立てている。近所で起こる事件との関係性が、最後の最後で明かされる。事件と、一緒に住んでいる5人がどう関わっているのか。そのことが頭の片隅に残ったままになるため、観ることを途中で止めることはできない。映画がエンターテインメントであることを改めて感じた。例えばコメディ映...この感想を読む
日常に潜む「狂気と驚異」
一見淡々とした日常、そこにある作為この作品は、観た後の余韻が永らく残る、「影響力の強い」ものだと言える。ありふれた日常だが、そこに歪みのようなものが外からじわじわと侵食するように入っていく。元々は、直輝、未来、琴美、良介の4人のルームシェアだったところに、男娼のサトルが加わる。この上澄みのハリボテを保とう、つまりはシェアしているぬるま湯に見える「平穏」を保つための手段の選ばなさが面白い。その部屋は「モデルルーム」であるかの如く、平穏と笑いに包まれるべきであるという無言のルールがあり、それを各々住む人は暗黙の了解として受け入れて暮らしている。誰しもが隠しておきたい秘密や感情の吐露(主に弱い部分)が少なからずあるが、それはルームシェアの家では「(例えあっても)無き者として、平穏に過ごす」というルールが常にある。表面的な人間関係をあくまで「保つ」ことこそ、この映画の主旨であり、それを守るための「絶...この感想を読む
配役ぴったり、だけど
まず映画を見て思ったのは、原作のキャラクターのイメージと配役がぴったりはまってるなと思ったことです。サトル役の林遣都は私が原作で想像していた以上にサトルでした。すばらしかったです。琴ちゃん役は最初貫地谷しほりさんだとあまりピンときませんでしたが、見ていくと彼女でなければ成り立たないくらいぴったりだと思いました。これだけ原作のイメージに忠実にキャスティングできているのに、ストーリーはやや浅く、それぞれのエピソードが簡単すぎる気がしました。なので、直樹のシーンが唐突すぎる印象になって「衝撃」よりもやや「?」となってしまっています。映像が全体的に暗っぽいのもなんか原作の印象と合わないと思いました。