リモコン下駄も髪の毛針もない鬼太郎
「霊毛ちゃんちゃんこ」がなければタダのひねくれた子供
生きながらにして地獄を行き来できる霊毛ちゃんちゃんこという特殊アイテム。
これを偽鬼太郎に奪われたとき、目玉の親父の台詞で
お前は霊毛ちゃんちゃんこがなければタダの子供だ、という台詞がある。
ゲゲゲの鬼太郎には様々な特殊能力や必殺技があるけど
それは人間に悪さをする悪い妖怪を退治するヒーローを退治するためには必須のアイテムだよね。
墓場鬼太郎においては非力な子供。
むしろ、大人に養ってもらわなければ飢え死にしてしまう、か弱い存在なのだ。幽霊族だからって不死身ではないし。
不死身でないから、人に頼るしかないわけで。
それもかつて幽霊族を絶滅にまで追いやった人間に、だよ。
人間から忌み嫌われようと、不気味がられようと、生きぬくためには人間と共存していかなくてはならないわけ。
自分が発端で水神を怒らせ、育ての親である水木が巻き込まれ、死ぬ瞬間に
鬼太郎と水木が目を合わせる。そのシーンの次点で
もう水木は水神に体を半分食われかけているわけで鬼太郎にはどうすることもできない。
鬼太郎も水木の最後を悟ったはずですが、その別れの言葉が「じゃあ」だ。
あまりにあっけらかんとしているし、ちょっと酷いw
男の名前が水木だから、この作品を育ててきたお前(作者・水木しげる)の手からはなれる主人公(鬼太郎)の構図とも言えるかもしれないけど。
鬼太郎には人間や人間の情などは生きるための糧でしかないんだと思う。
例外として寝子という可愛い女の子の存在があるわけだけど。
寝子ちゃんはかわいいし、鬼太郎が恋心をいだくのもしょうがないよ。
他人のためになりたい、尽くしたいという感情が芽生え、必死になる姿を見ると
自然と頬が緩むし、安心した。これが愛っていったら薄っぺらいかもしれないけどね。
こういう単純なところから、人って変わっていったりするものだと思うよ。
半分妖怪みたいなあやふやな存在という点でも同情するところもあったろう。
結果として残念な結果になってしまったけどさ。
可愛い女の子のためならがんばれる+妖怪という図式がなんとなく漫画「うしおととら」を連想させてしまう。
きっと、かわいい女の子たちとの出会いを繰り返すたび
鬼太郎は女の子を守れるくらい強くなっていくんじゃあないかな、と妄想が膨らんでくるよ。
強くなって人を守る喜びを知った姿が、ゲゲゲの鬼太郎と考えると面白い。
かわいい女の子が人を変え、成長させ、世界を変えていくってとっても素敵だと思うな。
人は信用できない。最終目的は幽霊族の再興?
人間は不気味な声で笑う鬼太郎を嫌ってる。
鬼太郎は生まれながらにして忌み嫌われ、邪険に扱われ
意図せず不幸をもたらす厄病神になったりするんだよね。
幽霊族と人間には大きな隔たり、溝があって、その溝はなかなか埋まるようなものではないと思う。
ポイントは目玉の親父は鬼太郎に言い聞かせる台詞の
お前は幽霊族唯一の生き残りだ、って言葉だよ。
幽霊族の誇りを忘れるな、お前だけは生き抜いてくれよ!!、というくらいの意味だろうか。
幽霊族をここまで追いやった人間ども許すまじ、鬼太郎よ、人間どもに痛い目みせてやれ。今こそ世界制服を!
っていうのは言いすぎだと思うけどw
人間ってほんとおろかで馬鹿だよ。お前はそんなおろかなもんにはなるなよ!
くらいの意味は含まれているかもしれないなと思う。
鬼太郎や目玉の親父ら幽霊族は人間の汚い面もいい面もよく知っているのだろう。
人の考えていることがまるっきりわかるっていうことじゃあないと思うけど
いまのコイツめっちゃ悪いこと考えてるな、僕らを貶めようとしているな……(怒)、って、
人間の悪い感情を妖怪アンテナみたいなもので敏感に察知している気がする。
これはたぶん人間による迫害から逃れるために身につけた術ではないだろうか。
迫害される身分+子供というとことん弱い立場であるカースト最下層の者にとって、
周りはすべて敵であり、信用のおけるものではないと気を張るのは当然とも思えるし仕方がないよね。
作者、水木しげると鬼太郎の共通点
ドラマ・鬼太郎が見た玉砕 水木しげるの戦争で
水木しげるの台詞に
わたしは戦後20年くらい、人に同情しなかった。なぜなら戦争で死んだ人間がかわいそうだと思っていたから。戦争で死んだ人間はものすごく生きたかった、死にたくなかったんだよ
というのがある。
戦争で死んだ人間は生きたかった。戦争で死んだ人間に比べれば、日常の不幸なんて同情するに値しないということだろうか……うーんわからん。
鬼太郎も水木しげるさんも地獄を見てきたという点では同じだよね。
鬼太郎は生まれてすぐに片目をうしなってるし、
水木しげる先生は戦争で左腕を失ってる。
鬼太郎は、おばさん連中に蛸殴りにされたり
偽鬼太郎とビビビと往復びんたしあってた。
水木しげる先生は戦時中に上官に幾度もビビビと往復びんたを浴びせられていたし。
こういう理不尽さもちゃんと描かれている。
この作品には作者の魂が刻まれているようでうれしく思えるし、いたるところにそういう共通点やニヤリとする要素が隠れていて面白いと思うよw
もう一つ気付いた点は、饅頭をはじめとする食べものの存在だ。
寝子ちゃんが鬼太郎に差し入れとしてもっていくときも饅頭。
ねずみ男が鬼太郎を眠らせる(気絶させる)ために仕込んだのも饅頭。
ドラマ・鬼太郎が見た玉砕 水木しげるの戦争でも饅頭を食べてるシーンが印象的だ。
まぁドラマではアイス食べたり、チャーハン食べたり、水木先生は食いしん坊だよねww
でもね、この食べるという行為が、生きる・生きていると直結していて清清しいというか気持ちいいんだよね。
どんなことがあっても生き抜いてやるという意気込みやパワーを感じて食べるシーンはとても好きだ。
総括して、原作をうまくアニメ化した良作だと個人的には思ったよ。
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