『都の子』と私と - 都の子の感想

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都の子

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『都の子』と私と

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文章力
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ストーリー
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キャラクター
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5.0
演出
5.0

目次

『都の子』

この本は、江國香織さんの『号泣する準備はできていた』という本と同時進行で読んだ。初めて『号泣する準備はできていた』を読んだ時は、どうしても「分かりたい分かりたい」と思ってしまい、心を落ち着けて読むことができなかった。江國香織さんの別の本を読めば、ちょっと違った気持ちで『号泣する準備はできていた』を読めるかなと思い、少し遅れで『都の子』を読み始めることにした。

「安っぽい飴の色」

この本を読んでいる今、私は、高校生である。本文の「私は、制服姿の女学生のつける、色つきリップとよばれるリップスティックも好きだ。あの安っぽいつやつやの赤。」。私は、その瞬間、それに虜になった。色つきリップを想像するだけでドキドキする。赤いやつ。校則で、色つきリップはメイクと同じだからもちろんダメ。だけど、電車だけでいいから。付けていたい。今しか付けられない気がするから。

私の特別なもの

江國香織さんの言葉に触れると、私は語り出したくなる。私の言葉で。私の特別なものについて。高校生の今、特別のものは、ヘアアイロンだ。なんだか、ありきたり。ヘアアイロンは最近、新しいものを買ってから特別だ。さらさらな髪の毛。それだけで、早起きはちょっと楽しみになる。ポニーテールがしたかった。ポニーテールが一番、男の子にモテるって思い込んでいるから。しなかったけど。だって、せっかくさらさらストレートにしたのにもったいないじゃん。学校は休みがち。でも、学校が嫌なわけじゃない。学校で本を読むのが好きだから、学校は嫌じゃない。図書室で、貸し出しの本、返却する本を、カウンターまで持って行ってコードを「ぴっ」ってやってもらうのが好き。たまに、表紙や題名を見られたくない本があるから、その本は、こっそり返却ボックスに入れる。カウンターと返却ボックスは近くにあるから、カウンターに図書委員の生徒や、図書室の先生がいない時間を狙うんだ。なかなかその時間がなくて、本の返却日が過ぎているのに返せない時もある。(早く返さないとだめだね。)駅の改札と信号のない横断歩道は好きじゃない。駅の改札は、朝の混んでいる時間に、なかなか列に入れなくて、改札から出れないから、好きじゃない。体育の授業のサッカーも好きじゃない。自分のいる場所が決まっていないから。一回もボールを触らないで終わる。見学だとしても、審判として大声を出すことになるから嫌だ。卓球は、そこそこ好き。ちゃんと自分の位置があるし。信号のない横断歩道は、好きじゃない。渡るタイミングを伺ってたら、「ピッ」って鳴らされたから。早く渡れって、怒鳴られたみたい。図書室の音とは全然違う。全然。アルバイトの後に、一緒に働いているおばあちゃんが、たまに自動販売機でジュースを買ってくれる。どこのジュースよりも美味しい。かっこつけると「人生の味」ってやつだね(笑)。1時間30分くらいしか、お仕事がない時にも買ってくれる。一日のお給料ほとんど、ジュース代になっちゃってる。きっと忘れない味。ふと、「一日は一日だからね。仕事は面白おかしくやるんだよ」って。おばあちゃんは言った。一緒に働けてよかったな。高校に入る時、ずっとダンス部に入りたいなと思っていた。オーディションがあるって聞いてから、見学にも行けなくて。結局、入部することもなかった。ダンス部の発表会がある時、いつも心の中で何かが渦巻いている。目を逸らしたかった。見たくなかった。卒業するまでは、きっとその気持ちは消えない。ダンス部の発表を見たくないくらい悔しい。自分が悔しいっていうのは、なんかよく聞くフレーズだから、言いたくない。ダンス部の子を見るたびに、心で何かが騒ぎ出す。騒がしい。耳障りなくらいに騒がしい。でも、これが自然に消えるまでは、何度でもその音を聞くことになる。どんどんどんどん叩く音。そういえば、ヘッドフォンが欲しいな。放課後の教室で、スマートフォンにヘッドフォンを繫げて聞きたいな。イヤホンで聞くのもいいけど、ヘッドフォンがいい。存在感は大きめだし、見た目も可愛い。ヘッドフォンってパーカーに似てる。リラックスできる。部屋着みたい。近所のすごく小さいショッピングモールみたいなのがある。そこにアイスクリーム屋さんがある。アイスクリーム屋さんって言っても、チェーン店だけど。お母さんと行くと、帰りにいつもアイスクリームを買ってくれる。甘くって美味しい。学校帰りに寄るから、制服姿なんだけど、学校帰りに制服でアイスクリームってすごくいい。甘い、甘い、アイスクリーム。大人になったら、この状況はもう体験できなくなると思うと哀しい。きちんと覚えていられるかな。学校に登校して、窓が開けられた廊下を通ると、懐かしい雰囲気を感じる。爽やかな朝ってのは、このことか。

あとがき

どうしても語りなくなったので、自分の言葉で語った。エッセイを読むと、私も自分が感じることを書きたくなる。伝えたいことがあるわけじゃない、わかって欲しいことがあるわけじゃない。だけど、なんだか書きたくなるんだ。

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