もっとラブラブしてくれりゃーいいのに
独特な絵がいいんだよ
いかにも種村さんぽいって感じのファンタジーである。時の神クロノスの命により、ストレンジャーを集めていざ世界を救え!的な話。なのに、ストレンジャーの話題はうっっすいので期待しないほうが身のためだ。
メインキャラクターはいつも通り、あのデカい目、そしてキラキラの背景、イケメンのショート・ツーブロックヘアスタイルである。だいたい少女漫画に手を出し始めたときの手始めが種村さんで、その当時はかなり巧いと思っていた。でも今では、それよりもっとすごいのに出会っちゃったからね…何とも言えないところではある。ただ、扉絵の可愛さは最強。これは揺るがないものがある。相当気合いの入った細かさで、表情もすっごくいいし、好きだね。
ヒロインの特徴もまたいつも通り。すごく元気で、一生懸命で、天然さん、そしてうるさい。さらに心には深い闇があり、いつも気を張って生きている…という女の子である。だいたいジャンヌもそうだし、満月、イオン、灰音もみんなそう。ただの女の子には魅力は出ないのかな。かわいさと美しさでは「紳士同盟クロス」の潮がダントツだと思っているので、響古は…まぁ、3巻で終了してもおかしくないと思う。気高いモードが発動したときは美しいんだけどね。通常時のあのアホっぽさが受け付けないんだよな…。華蓮のように、花と人の間に生まれて常に花びらが舞っているくらいのかわいさがあったっていいじゃない。華蓮に一目惚れしたのは鳥羽だけではないぞ。
もったいぶらなくても逆滝
スタートから先が読めてしまっておもしろくなかったんだよね。氷月と逆滝の関係性・憂いを見ていても、竜族の村を滅ぼしたのが誰なのかは明白だったし、逆滝のキャラクターを考えれば、襲うなんて絶対できるわけないし。イラスト的にも、作者さんが短髪キャラを勝たせるに決まっているしね。真っすぐで、馬鹿正直で、シャイボーイ。でもちゃんとカッコいい。そういうところはやっぱりヒーローだなーと思う。
3巻という短さだったためか、逆滝が響古を大事に想い恋するところは全然マイルド。焦がれる感じが全然なくて、むしろ物足りなかった。もはやスタートの時点で早く終わるの決まっていたのかな…もったいない。12人もストレンジャー作っておきながら、語らず片付けるなんて悲しすぎた。
響古が好きだって言えば、家来は逆らえないんじゃない?断ったらそれはそれで王家への大罪になりそう…だから、どっちかと言えば、響古がっつりじゃなくて、もっとぐいぐい迫る逆滝でいてほしかったんだよ。そんな、響古のことを真っ先に思い出してくれたとか、そんな生ぬるいものではなくて。もっとこう…あるでしょ?愛のささやきってやつが。
で、思うんだけど、地球王とクロノスの契約もよくわからんし、どうしてそうなった…?って思う。ラストがそうなるなら、憂を入れ物なんかにしないで、妻を入れ物にして、地球王が最後まで愛でればよかったと思わない?そうすれば、憂を好きだとか、地球王がどう思っているかとか、めんどくさくならなかったと思うんだよ。
一気にそろってしまったストレンジャーたち
2巻のあの終わり方から、いきなり11人揃えてくるとは思わなかった。最後のひとりなんて、氷月に決まっているじゃないか。全部わかっているんだこっちは。話を終わらせるために急いだのはわかるが、なかなかいいキャラもいたからもったいなかったなー…。
華蓮のように、人と自然に存在する何かを掛け合わせた生まれた存在がストレンジャーたち。一番は華蓮だと思っているが、個人的には雷が気になっている。いったいどうやったんだろうって…。小学生のロマンでもあるけどね。自然界を操れる的な発想は。種村さんがずっと出したかったキャラクターたちらしいが、いとも簡単に出てすぐ終わってしまって本当に悲しいよ。本当だったらあと10巻くらい続けて描けたのではないだろうか。本編で語られることも、番外編で語られることも全然なかったわけだが、他の作品に引き継いでいる者もちらほらといるらしい。いやー…もったいない。いつも登場人物たちの性格ならどう動くかなって一生懸命考えて、細かく設定作っているのだと思うし、この作品で生かしきれなかったことはさぞ残念だったことだろう。12人みんなそろってたらそろってたで…それぞれの恋模様が大変なことになってしまったかもしれない。そう考えると、続けるのは相当難しかったかもしれない。これでいいのだと思う。
それにしても、あの突如として出てくる回想や、特有のメッセージって…意味を解読するのが大変難しい。「時空異邦人KYOKO」では、それほど強くは出てこないが、他の人気作ではかなり…ひょっとすると、そういう面でもファンからはみると物足りなさを感じさせたのかもしれない。言葉の裏を取るのが苦手な私としては、いきなり詩のような語りを入れられてわからなくなることがよくあった。
響古自体にそんな設定複雑すぎる
慎重に策を考えていたのだろう。響古の設定が異様だった。憂と双子設定で、憂を目覚めさせるための旅だったはずが、実は最初から存在していたのは憂だけで、響古はクロノスの娘だった。憂を入れ物として、タイムストレンジャーとしての成長を父から試されていたのであり、憂だと思っていたモノはただのレプリカだったらしい。ここまででも複雑なのに、この状態から響古を消し去らないために編み出された策が…強引だ。
クロノスの娘が16歳になるとき、人間の身体を返す。そんな契約をした地球王の気持ちを考えてみよう。大好きだった奥さんが、憂を生んで亡くなった。この悲しみをどうにかするために、地球王は奥さんの忘れ形見であったはずの憂を差し出してしまったことになる。やっぱり、娘よりも奥さんが大好きだったんだよね。君に生きていてほしかった。だから、僕は…どうにかして、生き返らせたかったんだと思う。
憂の身体に入ったクロノスの娘は響古という名ですくすくと育ち、人格も響古として育っていった。地球王は、響古に対して何も思うものはなかったはずなのに、暮らしているうちに情が移って愛情を抱くようになっていく。
そこからなぜラストで、地球王が大切な奥さんの死体を響古の入れ物にしようと決めたのか…?愛していた人は死んでしまった。その事実を認めて、これからを生きていこうとする意志なのかもしれないが、それはあまりにも複雑。地球王が愛しているのが、響古なのか、奥さんなのかわからなくなるし、逆滝が彼女を愛することを、地球王が我慢できるのかとか考えてしまう。
強引ながらも世界観は素敵に
少女漫画でファンタジー。いつ読んでも、その世界に入り込んで楽しい気持ちにさせてくれる。だからファンタジー漫画はやめられない。彼らのエピソードは足りないところや強引なところもあるが、バッドエンドではなかったし、良かったということにしよう。
氷月が抱く感情は、もっと複雑でもよかったかなと思う。逆滝を想う気持ちと、自分の仲間を想う気持ち。その葛藤の中で彼が何を選ぶかは非常に大事なポイントだったと思う。逆滝は単純で、ただ氷月を大切にしただろうし、結果は同じだっただろうけど、地球王なんかよりこっちの恋物語や感情の浮き沈みがほしかったよ。たまには常に男の子目線な漫画もあるとおもしろそう。ヒロインをもっと儚げにして、きゅんきゅんしまくりのやつ。
とりあえず、ウエディングドレスのこまかさと巧さなら、種村さんは光ってるものがあると思う。
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