完全死亡で漫画より嫌だった
人気の漫画を映画に
「僕の初恋をキミに捧ぐ」の作者である青木琴美さん、悲しいものばかり描くよね…これだけ満面の笑みで終われない作品をよく描くよ…本当に。
小さな子どものころに出会った種田繭と垣野内逞。逞は心臓の病気があって入院中であり、繭はその入院している病院のドクターの娘。早く退院して、繭ちゃんをお嫁さんにもらうんだ。そんな逞がねぇもうかわいくて。そして残酷だった。20歳まで生きられないと知ってしまう2人…おかげで付き合っているのか付き合っていないのか、そんな状態で月日が流れてしまう。
原作マンガでは、繭が先にその事実を知り、逞を守ろうと必死になる。逞が自分が生きられないと知るのは修学旅行中に発作が出て、たまたま行った病院でうかつにも口を滑らせたアホな医者がいたからだ。そこから逞は大好きな繭と離れる選択をするんだが、映画ではもうお互いに知っていて、知っているからこそ距離感に惑う感じで描かれている。逞が不良っぽくなることもなくて、繭にずっと支えてもらってる感じ。その中で、照もちゃんと出てきて、逞と繭は揺さぶられる。照はまさに逞の未来。映画になるとかなり脚本がいじられることがあるが、照は絶対にカットされることはないだろうなーと思っていた。照の死をきっかけに、逞は自分の気持ちに正直に生きることの大切さを悟ったんだろうと思う。やり残したことがあってはならないんだって。繭もそれを受け止めて、2人は契りを交わす。弓道場でね。なんで弓道場…青木さん、外が好きだね。
岡田将生くんが主演ってなかなかない
岡田将生くんって脇役イメージなんだよね、個人的に。いい俳優さんだし、すごく好きな雰囲気なんだが、主役っぽくはなくて。それがこの映画ではちゃんと主人公って感じで、若くてかっこよくて。イメージを変えてくれた映画だったと思う。色白で、遠くを見つめる表情が逞によく合っていた。高校生ではないエロさがあったんだが、服装のおかげかなんとか高校生ってことで話の通じるようになっていたね。
相手役の井上真央さんは、花より団子のイメージが抜けていなかったが、繭のキャラクター的にも気の強いところが似ていたので、違和感は少なかった。自分としてはあの髪の毛のウェーブが気に入っている…。
2人のラブシーンは好きだった。もしかしたら漫画よりも好きだったかもしれない。男ががっついているのが好みで、それを受け入れる繭もまたかわいいと思ったし、ずっと想いあってきた2人だとわかっているからこそ、泣けてきた。どんなことに挑戦しても2度目はきっとなくて、すべて思い出になってしまう。また来年、何度でも、と約束できないことで、日常のあらゆることが奇跡みたいに嬉しいことだと気づける。なくなってしまってからでは遅いのに、人を大切にできないことって大いにある。いつでも、今日より若い日はないってことと、感謝を忘れないことを意識して生きていきたいよね。そんな気持ちにさせてくれた。
大好きなのに離れなければならないのか
紆余曲折がね、漫画ではもっとウザいくらいに細かかった。好きなら好きって言っちゃえよ!離れたくないって!!と何度イライラしたことか。映画では、言葉がなくても、お互いが離れられないことがわかっていて、別れも別れっぽくない。照と逞のキスの後だって、照の死をきっかけに2人の決意にもつながった。
命に続きがないからって、恋しちゃいけないの?とは思うよね。可能性を信じて行動することも大切だと思うし、その時好きな人と離れたくないと思うことが、間違っているとは思えない。親や周りが、いつか死んでしまう人間と一緒にいたって悲しいだけとか言うけど、そんなの遅かれ早かれ同じじゃん?それなら、大好きな人と、できるだけ一緒にいて、笑顔でいることの何が悪いのかって…そう思わずにはいられなかったね。早いうちに別れて、繭が次の人見つけて、子ども産んで…ってなるのと、繭が逞を想い続けて生きていくのと、どちらの道が正しいかなんて、人に決められるものじゃないだろう。行きたい方向に生きていけばいいと思うんだよ。残されたほうがつらいから、とかいう理由で逃げるより、全力投球でいるほうが人生明るそうじゃないか。親が子を心配するのは仕方がないが、1人くらい、繭と逞のことを応援してくれる大人がいたってよかったのに…とは思う。
鈴谷じゃなければ
ドナーが鈴谷である、というのは原作と同じ。だけど、漫画ではもっと残酷だったんだよね。繭が鈴谷とデートらしきことをして、そこで鈴谷が事故られて…という流れで、もっともっと苦しいものだった。
映画の中では、鈴谷が逞と和解して、友達になったことが大きな足かせだった。ドナーとして受け入れることができなかった逞は、いいのか悪いのかわからない。自分が生きて、証明できることもたくさんあったと思うんだ。鈴谷の死は決まっていて、逞には可能性があった。それを捨てて、何を守ったのかがわからない、とは言える。倫理って難しいね。単純に生きる可能性にかけて行動することが、誰かの心を傷めつけることにつながっているかもしれないなんて…鈴谷だって、逞の中で生きること、望んだかもしれないし、望まなかったかもしれない。何も知らない親が、決められるなんてさ…ドナー登録をしていたってだけで、何らかの鈴谷の意図を感じたりはしないのかね?自分が死んだら誰かの力に…って思っていたんだよ、鈴谷は。
しかもね、じゃあ知らない人だったら彼はドナー提供を受けたのか?というところ…絶対受けたでしょう。知っている人だったから無理だった。悲しみというより、矛盾を感じる気もしてしまう。そして、親の了承がないうちに、ドナーが来たと伝えてしまった医者に腹が立つ。望みがないなら最初から言わないでよ!!ってイライラするね。上げて下げてのテクニックに心は揺さぶられまくりであった。
ラストが希望なし
漫画とは違うラストが見られるって言うから、生きてるフラグが際立ったんだ!と思いこんだ。しかし、逆に死んだことが明確になっただけだった…
悲しすぎた。結婚式一人でやって、もう一生誰のことも好きにならずに、繭はどうやって生きていくのかな。逞以上に好きになれる人がいないかもしれない。それで繭は幸せかな。新しい誰かを大切に想うことが逞への冒涜になるわけじゃないと思うけど、繭は1人で生きていきそうだね。逞を想いながら、繭なりの幸せをつかんで生きていってほしいとは思う。もしかしたらお医者さんになって、逞みたいな子どもが1人でも減るように頑張るかもしれない。これだけの悲しい思いをした繭なら、普通の医者とは見える世界が全然違っているんじゃないかな。
ハッピーエンドを期待したのだが、全然そうはならず、拍子抜けしてしまったこの作品。遺骨が登場するその瞬間までずっと何かあるかもと期待したのに、望みはゼロとなってしまった。終始悲しみに包まれる物語だあり、この漫画から何かが学べるとすれば、いつでも感謝を忘れずに生きていこうということと、明日死ぬくらいの気持ちで毎日全力で挑めということかなと思う。全力で、笑顔になれる道を歩いていたら、寿命も延びる気がする。下向いてるやつよりは、最高な人生になっている気がする。というか、最高だと思って生きていない奴が幸せなわけない。日々のストレスに負けず、毎日を最高にする努力をしなければならないなーと思った映画であった。
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