「私を知らないで」の真意とは
設定はラノベチックだが文章力がある
孤高の美少女と冷めて大人びた少年と一見何も考えてないように見える少年というラノベにありそうな設定。あらすじを読むといじめに関する話かな?と思うが、いじめはほとんど関係なく物語は子供たちの内面にかかわっていく。
ストーリーは突拍子もない部分もあるし、登場人物が本当に中学生か?と思えるような考え方をしていたりもするが、そうならざるをえない状況にあるということを説得力のある文章で書かれている。
キヨコの「私を知らないで」の意味は
真意としては真逆だと思う。「知らないで」じゃなくて「知ってほしい」でも今の自分は知られたくない。
最初はいじめにも屈しない他人のことなんて干渉しないしされない芯の強い子のように書かれているが、だんだんと本当は普通になりたいただの女の子といった印象が強くなってくる。
お金や物に対する価値観は中学生離れした部分があるが、卒業式では本当は1日しか着ないコストパフォーマンスの悪いドレスを着たかった、とも言っている。
たしかに今まで一人でやってきたしやらないといけないという思いは強いがそれだけで生きていけるほど強い子ではない。
晋平のことも嫌いだといいつつ追い払うような真似はしない。むしろ自分の内面を少しずつ見せていっている。
終盤になり、祖母を殺したと嘘をついたことについて父親に叱ってほしかったとも言っている。
そんな強い子じゃない、普通の子になりたいそんな想いを知ってほしいの意味が隠れているのではないかと思う。
キヨコへの救いとラスト
キヨコを救った時点でこの物語はハッピーエンドにならないことが決定している。
(中学時代の)晋平は、同情心や仲間意識だけではなく恋心に気づいていない。その後家族として一緒に暮らすうちにその気持ちに気付くことになる。
しかし、もう義理とはいえ家族になってしまった上、親友(本人はそうとは言っていないが)である高野と付き合い結婚する予定になっている。
ラストではキヨコからこのまま逃げてしまおうかと誘われるなどお互いに思いあっている印象も受けるが、おそらく100%の本心ではないしそういう道もあったかもね程度のものだと思われる。
キヨコは普通の人生を望んでいたし、救った晋平もそうだ。
結婚相手から逃げるのは普通じゃないし、(義理の)姉弟で恋愛をするのも普通ではない。
かといって、あの時キヨコを養子にする選択肢を選ばなければ誰も救われなかった。
全員が全員幸せになったという結末ではないが、タイトルどおり切なげなラストに終わる。
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