深く考えずにいれれば軽く楽しめる作品
周りで褒める人はいないけれど
前作「ジュラシックパーク」に続くこの「ロストワールド」は、私の周りで全く褒める人はいなかった。むしろ喜んで観ていたのは私一人くらいのものだった。映画の評価でこのような明らかな区別がつくことがよくある。私が大絶賛したものに限って周りは冷たい感想で、その逆もしかり。というより、最近は私があんまりよくなかったと思う映画を人が絶賛することのほうが多くなった。
この映画はそういうことに気付く少し前くらいの映画だったと思う。私は「ジュラシックパーク」に続きこの「ロストワールド」も大好きな映画だった。ハラハラさせるツボもこころえているし、何より恐竜に追いかけられるシーンは前回よりも小型な恐竜なだけあって、よりリアルさと迫力さが上回っていると思ったものである。
専門的な評論はもちろんどうなのかは知らないけれど、自分が面白いと感じた映画に対して周りがこれほど「もうひとつだった」と口をそろえる映画に「マーズ・アタック」があった。あれも個人的には大好きな映画なのだけど(それはもちろん有名人がバンバン死ぬと言う理由以外で)、つい最近もう一度観る機会があったので観てみた。やはりキッチュでエキセントリックな出来で、いい映画だと思う。
有名どころがよくでている
いくら酷評とはいえ、出ている人はそれだけで映画が一本できるようなビッグネームが多い。映画始まってすぐくらいに死んでしまったリチャード・シフ。コミカルでそれでいて神経質さがよく出ていて役柄にぴったりだったのに、早いうちに死んでしまったのは残念だった。キャストとしては贅沢な使い方だと思う。あと敵といっていいのかわからないけど、敵対するハンターチームに所属するピーター・ストーメア。冒頭すぐにお金持ちの女の子が襲われたコンプソグナトゥス、いわゆるコンピーに襲われていかにも辛そうな死を迎える。確かにスタンガンでこの種をいたぶったりはしたけれど、これほどの凄惨な死を遂げなければならないほどではない。そういう意味ではこのような「5つの死の島」に来たといえど、彼は損な役回りだったのかもしれない。余談だけれど、彼は「アルマゲドン」のロシア人宇宙飛行士のイメージ強すぎて、あれ以来彼はロシア人だと思っていた。今回これを書くのに調べると実際はスウェーデン国籍だった。それはちょっと意外な発見だった(ていうかアルマゲドン以外にもロシア人宇宙飛行士の役で出てたと思うのだけど。あれはなんだったんだろう)。
主人公であるジェフ・ゴールドブラム。「ザ・フライ」であまりにも有名な彼だけども、前回のただのイヤミ屋というか皮肉屋というかそういうところから脱却して、見事にリーダーシップを張っている。そもそもこの人は科学者役がよく似あう。「ザ・フライ」でもあまりにもはまりすぎて、つらすぎるところがあった。あれをもし今の年で見たらもっとつらいような気がする。それくらい彼のハエになってしまった眼の奥の演技力が素晴らしかった。そしてそうなってしまった科学者の学への熱心さを彼はうまく表現していたと思う。
しかし、恐らく彼の役としてのイメージがそうさせるのかもしれないけれど、恋愛ものがどうしても似合わないと思ってしまう。今回の映画も少しそういうところが不安だったのだけど意外にそうでもなく、恋人を守ろうと必死に動く不器用な科学者として、その役柄がすっきりとはまっていた。印象的な場面がリチャード・シフ演じるエディ・カーが、ステゴサウルスに襲われている彼女を守ろうとジェフ・ゴールドブラム演じるイアン・マルコムが撃てと言っているのに、エディはステゴザウルスは子供を守ろうとしているだけだと反論する。それに対して、「こっちもだ!」という会話は不器用な彼の深い愛を感じさせ、好きな場面のひとつだ。
いくつかの疑問に思うところ
冒頭から退屈させずにぐいぐい映画にひっぱってくる内容はいいと思うのだけど、何度か観ているといくつかの疑問が出てくる。イアンが恋人のサラを探しに島に入り、いきなりその名前を大声で叫ぶところはプロがすることではないように思う。その上イアンは前作でティラノザウルスに襲われているし、恐竜に対しての恐怖心は刷り込まれていると思う。前作にあった彼の明るさが今回すっかりなくなり、いつも暗い顔をしているのはそのトラウマを感じさせたしリアリティがあったのだけど、なのにそれらを呼び寄せるような行動をするのかということは疑問に思った。「ジュラシックパーク3」でカービー夫妻がいなくなった息子を探すために島に上陸し、その時もついた途端大声で息子の名前を呼ぶ場面があった。あの時は同行したメンバー全員でそれを止めたくらい、それは危険な行為だとわかる。それをプロの博士がするのか、しかも恐竜に襲われたことがあるとなると、それは少しリアリティにかける行為に思えた。
もう一つ、ティラノザウルスの子供を救おうとした結果、探査車をティラノザウルスの親に崖から落とされる場面がある。あの時サラが探査車のフロントガラスの上に落ち彼女が動こうとする度にヒビが入るのだけど、それほどあの車はもろくないと思う。出発する前、島に向かうために色々な用意がなされている場面があり、その時にあの探査車も色々な装備をされていた。それはきっと恐竜のアタックにも耐えうる重装備だったはずで、だからこそそのガラスはもっと厚いものだろうと思ってしまった。
あと一つ、ティラノザウルスがサンディエゴに来たときに街に歩き出し住宅街を歩きまわっている場面があるけれど、警察が誰もいないのがかなりの違和感だった。船が波止場に乗り上げた時点で通報はあるはずだし、サイレンの音くらいはあってもいいのかなと思った。また街の人たちが逃げ惑う場面で、日本人風の人々もいた。あれはゴジラをパロっているのかどうかわからないけど、印象的なのにもかかわらず中途半端感が残る残念な場面だと思った。
イアンたちと対照的な立ち位置のハンターたち
ルドローに雇われたローランドを始めとするハンター軍団だけど、なにかしら中途半端なイメージだけが残った。登場当初は命をゲームのように弄ぶような残忍さを感じさせた軍団だけど、特徴的な描写はそこだけであとはチームワークもとれていないし、血のついたサラのジャケットを見て「怪我したのか?」と聞いたり、なんとなくそのイメージがぶれてきていたのが気になった。またローランドが相棒をなくし、最後「これ以上仲間を失いたくない」とルドローの誘いを断るところがあるけど、その相棒とそれほどの絆があるというのが作中では感じられなかった。また彼はどっちかというと仲間がどうあれ自分の目的のためには手段を選ばないような残忍さが感じられたし、それは最後までそのままであったほうがリアリティがあったと思う。
色々疑問がありながらも最後まで楽しめる映画
疑問の極めつけは最後のジョン・ハモンドの言葉だと思う。島の保護をうたい、恐竜のためには人間の手はいらない、自然に還そうなどと言っているが、一番自然から遠いところから生まれた恐竜たちを作ったのは自分たちだろうと突っ込まざるを得ない。
そうはいってもこの「ロストワールド」は、映像は十分ハラハラさせるものだし軽く楽しめるものではある。ちなみにこの映画はラズベリー賞に三部門ノミネートされたということだけど、それほどひどくはないと思う。「最低脚本賞」はともかく、「最低続編賞」はクリアしているのではないだろうか(自分なら「最低続編賞」には迷いなく「スピード2」と「マスク2」をあげる)。
だからこそ、この作品が皆が酷評する映画で自分が面白いと感じたものの筆頭になる。だって結構面白かったもの。
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