自然主義的な徹底したリアリズムで、詩情豊かに謳い上げた西部劇史上に残る名作 「シェーン」 - シェーンの感想

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自然主義的な徹底したリアリズムで、詩情豊かに謳い上げた西部劇史上に残る名作 「シェーン」

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.5

雪に覆われたワイオミングの山を、馬にまたがったひとりの流れ者が行く。ツバの狭いテンガロン・ハットをかぶり、フサのついた皮の服を着て、手アカのついたガン・ベルトを腰に巻き、ホルスターの中には必殺の拳銃が輝いている。

どこから来て、どこへ行くのか。その男の名は、シェーン------。見事な俯瞰撮影で幕を開けるこの映画は、巨匠ジョージ・スティーヴンス監督がジャック・シェーファーの原作を得て、ヴィクター・ヤング作曲の「遥かなる山の呼び声」のメロディーの中に善と悪との対決を牧歌調のタッチで綴り、自然主義的なリアリズムで詩情豊かに謳い上げた叙情西部劇の名作だと思います。

ここには、詩情と西部開拓精神と正義心とが、のどかなムードの中に見事に捉えられているのです。悪への怒りと、人間への限りない愛と、そして大地への愛着、それらを、流れ者シェーンと純朴な農夫一家の心あたたまる交情を通して、情感豊かに描き出したところが、この映画の良さであり、不朽の名作として映画史上にその名を残しているゆえんだろうと思います。

緑したたる開拓地にたどり着いたシェーンは、たまたま立ち寄った農家の主人夫婦の好意と、あどけない少年への友情から、拳銃渡世の足を洗ってこの地に永住しようと決心するのです。だが、平和な生活は長くは続かず、暴虐な開拓者一家が、暴力をふるって農民を追い出そうとしているのです。

しかし、この農夫一家は断固として、立ち退きを拒絶するのです。そのため、開拓者一味の迫害は日に日に激しくなっていき、農家を焼き払い、名うての殺し屋を雇って罪もない農民を撃ち殺したりするのです。

そこで、堪忍袋の緒が切れたシェーンは、遂に立ち上がり、二度と持つまいと思った拳銃を腰に下げ、馬に乗って敵と対決することになるのです------。

世話になった主人への尊敬と、その妻への思慕と、少年への限りない愛情を胸に秘めて、シェーンは敢然と悪に挑んでいくのです。その後を追いかける少年と愛犬。決闘は、あっという間に終わってしまいます。

アラン・ラッド扮するシェーンと、ジャック・パランス扮する殺し屋の鋭いセリフのやりとりが行なわれ、二人は目にも止まらぬ早わざで、ほとんど同時に拳銃を抜く。勝負は一瞬で決まり、殺し屋ともう一人の敵が床に倒れたのだ。

そして、次の瞬間、表からのぞいていた少年が「あぶない!」と叫んだ。さっと身をひるがえしたシェーンが振り向きざま、二階の敵をファニングと呼ばれる扇撃ちで撃ち倒す場面は、まさにスカッとするような鮮やかさなのです。

やがて、シェーンは、孤影寂しく雪山の彼方へと去って行くのです。少年の心に正義の尊さを教え、自らはガンマンの宿命を背負って遠ざかるその姿------。

アラン・ラッドの一世一代の名演技であり、去りゆくシェーンに向かって「カムバック シェーン!」と叫ぶ少年の山々にこだまする呼び声は、永遠に私の耳の奥から離れず、哀調を帯びた「遥かなる山の呼び声」のメロディーが、いつまでも私の脳裏に切ない余韻とともに残るのです。

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