ハッピーエンドでフィクションチックさを残した就活ストーリー
就活のリアル!主人公チョコ食いすぎじゃない?
物語は、これから就活を迎える大学生5人のグループがファミレスで集うところから始まります。水越千晴はじめ、その仲間たちです。彼女、彼らはただのお気楽仲良しグループではなく危機感もあり、すぐグループ面接の模擬練習を始めます。これが、結構あまり専門的でないお気楽大学生より真面目でシビアな内容で、逆にこんな奴らいるのか?と思いましたね。ファミレスで面接練習するか?しかもかなり本番に近く、話を引っ張る能力、話題提起できていたか、論理的思考能力など面接官が見そうな項目をきちんと採点しています。就活始めたての大学生でここまで詳しいものなのかな?と少々疑問でした…がまあしっかりしたメンツだったのでしょうか。各々、自分のキャラクターや能力に不安な部分を抱えながらの就活スタートです。
ここでも、話題提起力があるだけでもダメだし、相手の話に耳を傾け、そこから話を広げる能力、数字としての知識があるかや話を司会者のように進めていく能力など、コミュニケーション能力のバランスの良さが見られているんだなぁ、と感じました。それぞれ得意、不得意が必ず出てくるので、中々面白い所ですね。そして、各々が得意なところを見せようと必死だったのが妙にリアルで笑えました。
まあそうなるよな。と。
大手会社に挑む
そして、各々がマスコミや編集者など希望の分野の大手会社に面接していきます。
ここでもリアルなのが、才色兼備な女メンバーがいち早く有名テレビ局のアナウンサーになれるかも、とチャンスを掴むところ。主人公は美貌もとりたてたスキルもない為、焦りや劣等感を感じます。ここも、女としてはかなり共感を得やすい人物設定になっているなと思いました。おめでとう!って言いながら心の奥では黒い感情に支配されているのが女というもの。男もかもしれませんが、筆者は女なので、それしかわかりません。
自分には何があるのだろう、何がアピール出来るのだろう…自分の長所、短所を含め、他人と比べてしまう弱さなど色々な面と向き合うことになります。人に自分を紹介するだけではなく、どれだけ役に立つか、どんなことがしたいかなど売り込んでいくことが求められる就活。自分のマイナス面は言わないこと、聞かれたらどう克服したか、していくつもりかを考えておかなければならない。
今まで目を背けてきた、曖昧にしてきた部分が露呈される、ありのままの自分で認められるかはっきりつきつけられる、就活が苦しいのはそこだと主人公は考えます。
現実は厳しい…大手に落ちる日々
主人公含めた就活メンバーは大手会社から順に希望職種の面接を受けていきます。
ここで少し厄介なのが、第二、三希望の会社の面接が先にあった場合、内定を貰ってそのまま就職するかですね。
なので、受ける時期や、どちらにかけるかという選択、運も必要になってくるのが就活です。主人公の千晴も、希望の会社から受けて行っています。そんな中、男子メンバーの論理派、比呂氏が就活鬱のようになり、自室に引きこもってしまいます。なんだか、融通の利かない真面目だけが取り柄みたいな人にありがちな展開ですね。みんな苦しいのだけど、自分で追い詰めすぎるというか、ただ目の前にある目標を頑張り続けることが出来ず、あれこれ考え過ぎてしまって、他人に否定されるのが怖いのだと思います。普段頭脳派として一目置かれているだけに、落ちた時のプライドがズタズタにされる感じや周りの憐れみの目に耐えるタフさも持ち合わせていないのでしょう。なまじ頭だけ良いのも考え物だなと思います。就活というのは、いかに自分らしく、それに見合った場所を根気強く探していけるかが鍵なのかもしれない。そう思いました。
特別なスキル、知能、コミュニケーション能力ももちろんですが、落ちても堂々と振舞うこと、自分らしく明るく前向きな姿勢を見せることを忘れず、いくつもの企業に立ち向かっていく主人公の姿に、特別なことをするのではなく、自分らしくいられる場所に行けるように努力する事が大切だと教えられた気がします。
無理をして良いと言われる企業に合格しても、どこか合わないところが出てきそうだからです。
なんでも万能な男性メンバーは、いくつもの企業から内定を貰いますが、自分のしたいことを見つけ、それらをけっています。
また、有名テレビ局のアナウンサーになれるかも、といっていた美人な子は採用され、嬉しいはずなのに何処かレールを外れたかったというような発言をします。美人ともてはやされることは、一見幸せのように見えて、本当の幸福感は得られないようだと思いました。だってそこには、自分が愛されているという実感ややりたい事や目標を達成したという充実感などないのですから。生まれたままの見た目が褒められている薄っぺらい喜びだったのです。もちろん、才色兼備の才の部分も秀でた彼女だったから受かったわけですが、何か自分のキャラクターを出してやりたい事にぶつかってみたかったのかもしれませんね。顔と頭で正規ルートに受かるというレールのような生き方に少しつまらなさを感じている彼女の感情が垣間見えます。
比呂氏は結局、就活時期が終わると気が楽になり引きこもり解消します。仲間の支えだけではなく、時間が解決してくれるーそういう人の力だけではどうにも出来ないこともあるのだというリアルを描いているなと思いました。
最後に主人公は、希望の大手ではないものの、希望の部署?職種でそこそこ有名な二社から内定を貰い、どっちにするかは描かれないまま物語は終わります。就活で鍛えられた持ち前の笑顔と明るさがあればやっていけるだろう…という締めくくりで。なんだか、リアルとフィクションが入り混じったラストでスッキリとまとまってしまいましたね。
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